ごみをごみ箱に捨てる。それができないが故に、時に深刻な健康被害に発展する国がある。今回は、ソロモン諸島でJICAボランティア・環境教育隊員として活動する狐塚聡志さんより寄稿していただいた。(編集:オルタナS特派員=原彩子)



日本で過去に国際協力機構(JICA)主催の研修を受けたソロモン人で構成されるソロモン日本研修同窓会(Solomon Nihon 【JICA】 Alumni Association) が3月3日 ホニアラ市で清掃イベントを開催した。ソロモン日本研修同窓会のメンバーの他、市役所職員やJICAソロモン支所職員、JICAボランティアなど総勢約30人が参加した。

参加者には、当日キャンペーン用に作成したTシャツと手袋を配布。簡単な準備運動をしてから清掃活動を開始した。
捨てられて放置されたごみは悪臭を放ち、蚊、ねずみ、ゴキブリ、そして蠅などの恰好の住処となる。ごみは景観を損ねるだけでなく、深刻な健康被害をもたらすこともある。マラリアを媒介する蚊は、捨てられた容器にわずかに溜まった水で繁殖する。裸足で道を歩くこともあるソロモン人が道端に落ちているごみによって怪我を負い、破傷風になる可能性だってあるのだ。特にマラリアは昔から重大な健康問題のひとつで、国の経済的・社会的開発の障害となっている。

アルミ缶や段ボール、ペットボトル、お菓子の袋、生ごみなど様々なごみが次から次へと集められていく。参加者は笑顔で、楽しそうに清掃活動を行っていた。ごみをごみ箱に捨てるのはけして難しいことではない。しかし、拾うとなるとその倍以上の時間がかかることに参加者が気付くかどうか。

この国では分別する人もいるが、ほとんどの人々は缶もプラスチックも燃えるごみも一緒に廃棄する。生ごみは、庭先や斜面に投げるだけだ。道端にごみを捨てるのは日常茶飯事で、それが健康被害に繋がるなど考えてもいないのだろう。「ごみが予想以上にたくさんあって驚いた」「Tシャツがもらえて嬉しかった」という感想を挙げる参加者がいる中で、今後どうするべきなのかというアイデアは聞こえてこなかった。

活動を始めてまだ1か月であるが、環境教育の厳しさを実感している。ごみはごみ箱に捨てるという当たり前のことをしない彼らには、彼らなりの理由があるのだろう。しかし、自分の捨てたごみが誰かの命を危険に晒しているとしたら--ソロモンの発展を考える上で最も重要なのは、ごみをごみ箱に捨てるという教育の他にない。