全国24カ所を巡回してきた福島県相馬市の子どもたちの絵50点が、東京・新宿に展示されている。新宿区が地元商店街振興組合や協賛企業などと開催する「新宿クリエイターズ・フェスタ2012」の一環だ。
会場には、絵を描いた子どもたちあてのメッセージを投函できるアーティスト特製の10個のポストが並ぶ。うち8個は24日から「被災地に届けよう、みんなの絵手紙――ポストアートプロジェクト」として新宿通りに移され、福島の子どもたちと新宿の街を歩く人々を結ぶ役割を果たす。
同プログラムをプロデュースした版画家の蟹江杏(かにえ・あんず)さんは、相馬市の知人に相談して震災直後から被災地支援を始めた。「子どもたちの心の支えに」と絵本や画材を集めて送り、4月の避難所での「お絵かき教室」「版画体験教室」に始まり、アートで子どもたちに寄り添う活動を続けている。
今回は、約250点の作品群から、相馬市立中村第二小学校の3年生が2011年5月に描いた絵を展示。福島第一原発から50キロメートル圏内の同校では、津波で家族や家を失った児童も少なくない。津波の絵も多いが、「新しい町」「よみがえった海」など明るい色彩の絵が目立つ。
各地で反響を呼んだ子どもたちの絵は、2011年10月に『ふくしまの子どもたちが描く あのとき、きょう、みらい。』(徳間書店)という作品集になった。
蟹江さんたちは、同書の印税とチャリティ原画展への募金で、世界中から寄せられた12000冊以上の絵本を収める「3.11こども文庫」の開設を目指している。
新宿の展示は9月2日まで。8月25日には会場で、「絵が子どもをどれだけ元気づけるか――実例をあげながら」と題した蟹江さんと詩人の桑原茂夫氏の対談がある。(オルタナ編集委員=瀬戸内千代)