先進国での事例をそのまま途上国に移管しようとしても失敗することがある。途上国であるからこそ、逆に新しい事業が始まる可能性もあるだろう。ジャマイカ初の公衆無線インターネットのみのプロバイダ、デカル・ワイヤレスはポートアントニオ市に本社を置き、島全土にサービスを提供する。

2009年に彼らが事業を開始するまで、山奥や農村などの地域はインターネット環境からは取り残されていた。正確には、サービス自体はあった。しかし最低賃金が25000円というこの国で、2000円以上のDigicel社やLIME社のインターネット月額料金は高額だ。また、貧しい人々が契約するための住所を持っていないこともあった。
ジャマイカ政府の動きは殊に遅く、この問題を解決するのは企業以外になかったとも言える。

デカル・ワイヤレスは、通常のWiFiの10倍の範囲まで通信が可能なSuperWiFiという技術を用い、24時間365日サービスを提供する。いつでも、どこでも、誰でもアクセスできることが特徴だ。工事もモデムも必要ない。インターネットを使いたい時には、名刺サイズのカードを買い、裏に書かれた数字とパスワードを入力してログインするだけだ。パソコンやスマートフォン、タブレット端末などWiFiをサポートしているデバイスであれば、どれでも使える。
24時間有効のカードは150円で、もちろんデータの送受信は無制限。サービス圏内であれば家でも、街中でもアクセス可能。7日間用と30日間用もあり、日数が増えるほど1日当たりは割安になる料金設定だ。

香港出身のアラン・フォンさんは技術チーフとして2009年のサービス開始当初から働く。「僕たちがサービスを提供したことで、農村地域の人々が、世界の様々な情報にアクセスできるようになった。僕たちが目指しているのは、誰もがより安く、使いたい時にインターネット環境にアクセスできること」と語る。

使いたいときに、使いたいだけ、というのはマイクロクレジットの考え方と似ている。途上国のインフラやサービスの拡大には、彼らの生活環境や文化に沿ったビジネスプランが必要であろう。(オルタナS特派員=原彩子)

■DEKAL WIRELESS ウェブサイト(英語)