聴覚障がい者が夢をあきらめないで済む社会を作るため、手話サービスをIT技術で提供。そんなミッションでSFCに事務所を構える若者がいる。学生サークルから生まれた手話ビジネスとは。(聞き手・今 一生)=文中敬称略

大木洵人[じゅんと](24歳) シュアールグループ代表。SFC(慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス)学生時代に手話サークルを発足し、NPO法人や株式会社等に再編する。

代表の大木さん

――手話を活用したビジネスの難しさとは

大木:聴覚障害者の中には、日本語を十分に理解できない人もいます。

彼らは手話が公用語ですから、手話ができるスタッフがいないと、なかなか情報が社内で共有できないんですね。

手話は「てにをは」を使わない言語体系なので、100%聴者の意味を伝えにくい部分もあります。

筆談の際に文字そのものが読めても、理解できないことがあります。1個もわからない単語が無かったのに、文脈がわからないということが、聴覚障害者にはあるらしいのです。コミュニケーションの障害がそこにはあります。

――スカイプによる手話通訳サービスにも手話通訳者が必要ですね

大木:私たちは2011年2月にそれを実用化していましたが、3月に被災地のろう者のためにサービスを提供する際には手話通訳ボランティアをツイッターで募集しました。すると、ロンドン在住の日本人の方が夜の時間帯を担当してくれました。

もっとも、手話通訳者には地位向上が必要です。私の先輩には、大学を出ても手話の仕事がコンスタントに入らないので、コンビニでバイトしながら手話の仕事をしている人がいます。

週2のペースで1回4千円の仕事が来るだけ。しかも、手話の仕事は2週間前に決まることが多いので、1週間でシフトが入れるバイトを他にしておかないと、手話の仕事が続けられないのです。

まずは、日本国内で手話のできる人がその能力を存分に発揮できる場所を増やしたい。聴覚障害者向けサービスの分野では日本は遅れていますが、いつかは日本発の新商品やサービスを生み出して世界に打って出たいです。

――大木さんはNEC社会起業塾で何を学びましたか

大木:常にニーズを見るということを学びました。ニーズが無ければ、いくら面白い事業でもダメ。聴覚障害者のニーズに立ち向かっているのは我々しかないと思っています。


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