障害者の就労支援を中心にソーシャルビジネスを展開するゼネラルパートナーズ(東京・中央)は、「障害者の結婚に関するアンケート調査」を実施した。世の中には、結婚に関する調査は数多くあるが、障害者にスポットをあてた調査はこれまでほとんど実施されていない。今回の調査では、そのような当事者の実態や結婚観が明らかになった。(オルタナS編集長=池田 真隆)

調査を実施したのは同社の運営する調査・研究機関「障がい者総合研究所」。同研究所のアンケートモニターに登録している20代以上の身体・精神・知的障害者478人に対し、インターネットで調査を実施した。

■結婚していない障害者の約7割が、結婚を望んでいる

回答者のうち、結婚していない人の割合は 74%と高い。ただし、「いずれ結婚するつもり」という人が 66%となっており、多くの人が結婚を望んでいることが伺える。

■障害が支障になる、結婚している人・していない人で大きな開き

「結婚を決断または結婚生活を送る上で、障害は何らかの支障になるか?」という質問では、「結婚している人」と「結婚していない人」の間で大きな違いが見られた。「結婚していない人」では、「支障になると思う」と回答した割合は71%。一方、「結婚している人」ではその割合はわずか25%であり、「支障にならない」という回答が大多数を占めた。

■過半数が「恋愛と結婚は違う」と回答

「恋愛と結婚は違うと思うか、同じだと思うか」を尋ねた質問では、過半数が「違うと思う」と回答した。フリーワードでは、「恋愛は自立していなくてもできるし責任を伴わない。結婚は自立していくことが必要で、相手に対して責任が伴う」(男性/30代/身体障害)、「恋愛はその時だけ楽しかったら良いという感覚。結婚は高齢になってからも付き合うので、ある程度責任が必要」(女性/40代/身体障害)――といった回答が出た。

■調査結果から見えてきた結婚への障壁

障がい者総合研究所の中山伸大所長

今回の調査結果を受け、障がい者総合研究所の中山伸大所長は、次のように語っている。結婚をしている人と、結婚していない人で、「障害を支障に感じる」という割合に大きな差が生じたのは、逆説的な見方をすれば、「結婚前に支障を感じなかったため結婚できた」とも言えます。しかし、もう一方では「結婚後に支障とならないようなことに対しても、結婚していない人は支障だと感じ、結婚を躊躇している」とも推測できるのではないでしょうか。

また恋愛と結婚を別物と捉えている人が多いことも分かりましたが、このような結婚観も、結婚への心理的な障壁になっていると言えるでしょう。

■心のバリアを超えて

今回の調査結果では、障害が支障になると考えている人による、結婚に対する不安の声も見られた。「聴覚障害のためコミュニケーションが健常者と比べて劣る。聞き返すことが相手にとって苦痛になるのではないか」(20代/男性/身体障害) 、「行動が制限されるため、私ではなく健常者の方とお付き合いしたほうが、相手の幸せになるのではないかと考え込んでしまう」(30代/男性/身体障害)、「空気が読めない。身なりを気にしないなどを容認してくれないと続けられないと思う」(30代/女性/精神障害) ――など。

一方で、結婚している人からは、障害は「結婚の支障にならなかった」という声が非常に多くなっている。このような結婚している人たちの声は、結婚していない障害者にとっても、希望を見出せるものではないだろうか。いつかは結婚したいと考えているけれど、障害があることが心のバリアとなり、結婚できずにいる方々も多いと思われる。そのような方々が、心のバリアを少しでも低くし、前へと踏み出せるようになれば、より多くの幸せな結婚の事例が生まれていくものと思われる。

ゼネラルパートナーズは、障害者専門の人材紹介会社として、2003年に創業。その後「就職・転職サイト」「障害別の教育・研修事業」「就労困難な障害者による農業生産事業」など、幅広い事業を展開している。2016年10月には障害者アスリートなどにも支援対象を広げており、これまで就職・転職を実現した障害者の数は5000人以上に及ぶ。

また、「誰もが自分らしくワクワクする人生」というビジョンのもと、今後は障害者に限らず、不登校、ひきこもり、LGBTなど様々な不自由を抱える方々のサポートへ、ビジネスの領域を広げていくようだ。

今回の調査でも明らかになったように、結婚に対し不自由を抱えている障害者は非常に多い。その解決の糸口の一つとして、同社のような企業には期待したい。働くことによって、自己肯定観が高まり、結婚へのハードルが下がるかもしれないからである。

調査結果のプレスリリース:「障害者の結婚に関する意識調査」

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