外国から来て日本に暮らす人は、2010年現在、約200万人にのぼるそうだ。彼らは言葉や文化のちがいから、コミュニティに溶け込みにくいという状況があり、セーフティネットとなりうる居場所や地域住民とつながれる場が求められている。

多様な人種が集まり、お互いのことを分かり合う


温泉で有名な大分県別府市には、立命館アジア太平洋大学(以下APU)がある。そのため留学生やその家族など、外国から来た人たちが多く暮らしている。

今年の2月、私は別府市の文化国際課が主催する「Lunch with us?」というイベントに参加させてもらった。

「Lunch with us?」とは、別府に住む外国人市民や留学生と、地元の人たちが、一緒に日本料理をつくって食べることを通して、交流を生み出そうとする事業で、月に1度、市の施設を使って行なわれている。

この日はひな祭りが近いということでメニューはカップ寿司と桜餅、そして春野菜の天ぷら。白酒は以前出した時人気がなかったということで、飲み物は桃カルピスだった。

時間になり、徐々に集まってきた参加者の母国はイギリス、アメリカ、マレーシア、ガーナ、キルギス、メキシコ、韓国などさまざま。神さんお手製のレシピを見ながら、わいわい言いながら一緒に料理をする。家族連れでの参加も多く、子どもたちも料理に参加したり、工作をしたりして過ごしていた。



「Lunch with us?」はこれだけ留学生や外国人市民の多い別府市に、外国人のための相談窓口がないことに疑問を持った文化国際課の嘱託職員(当時)の神智子さんが、事業提案をして始まった。

「こうやって、一緒に料理をして、ご飯を食べて、顔の見える関係ができていたら、何か困ったときに、”あ、あの人に言ってみよう”と思う人がちょっとでも増えるでしょう。」との思いで続いたきた。情報は口コミで広がり、参加者はリピーターや初参加の人を合わせて毎回20人ほど。「予算はないけど好きにやっていいよ、って言われてね。」ということで、材料費などの経費は参加費でまかなわれている。

印象的だったのは、それぞれの文化・宗教を尊重しようという姿勢。例えば、ムスリムの人はアルコールを口にしてはいけないが、実はお酢や醤油にも酒が使われていることがあるそうだ。(私は知らなかったので驚いた)
だからしっかり原材料をチェックして、多少お値段が張っても、酒の入っていないものを選ぶ。これだけの国の人が来ている中で、それぞれの文化に配慮をするのは結構大変なことだと思うが、その配慮が自然になされているのがとてもいいな、と感じた。

「Lunch with us?」は、3月で発展的解消をし、新たに「べぷはち」というグループになった。これからは料理に限らず、お花見など季節ごとのイベントやヨガ、お茶会などに内容を広げながら、みんなが笑顔になれる場をつくっていきたいという。

「Lunch with us?」や「べぷはち」のように、人の思いで開かれる場が、人の支えになったり、楽しみになったりすることにはとても価値があると思う。

これから「べぷはち」がどう展開していくのか、とても楽しみだ。(オルタナS特派員=武田緑)



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