青年海外協力隊と聞いて浮かぶイメージとは何だろうか。

アフリカの広大な大地に住み、携帯電話もインターネットも使えず、たらいに貯めた雨水で身体を洗う。
独自の言語を話す現地住民は自然と調和した生活をしているが、安全な飲み水を確保する為に毎日何時間も歩かざるを得ない。彼らの為に、日本から来た隊員が井戸を掘る。

長らく青年海外協力隊とはこういうものと思われてきただろう。実際にそのような活動をしている隊員は現在もいる。
しかし、SNS(ソーシャルネットワーク)が世界とのコミュニケーション手段になるにつれ、青年海外協力隊は日々、進化している。

筆者の活動場所は配属先のオフィスで、勤務時間は基本的に8時半から17時までだ。しばしば17時からミーティングがあり、帰宅が20時を過ぎることもある。日本での社会人生活と大差はない。
学校訪問やイベントなど外での活動がなれけば、基本的にオフィスワークだ。新しい企画の資料を作ったり、インターネットで情報収集をする。
無報酬で働く2年間限定の派遣社員という言葉が適切だろうか。しかし、仕事の内容は漠然としか決まっておらず、自ら考えるプロジェクトの内容、それに付随するマーケティングや、関係団体との調整などは配属先の人物と一緒に行う。要は環境教育という目的に沿った仕事ができれば、何をやっても良い。

今まで青年海外協力隊員からの情報発信は、ブログが中心であった。しかし、最近はTwitterやFacebookを使って自由に、リアルタイムに発信している。
無論、インターネット環境は国によっては様々だ。データ量によって課金される国もあれば、ジャマイカのように定額制が一般的な国もある。住む環境により、場末のインターネットカフェや、首都の隊員用宿泊施設でしかインターネットに接続できない状況下で逞しく生きる隊員もいる。

さて、ここジャマイカに目を移せば隊員は日々、インターネットで情報を収集し、twitterで呟き、foursquareでチェックインし、facebookに週末のレジャーや活動の写真をアップし、YouTubeの面白い動画をシェアし、iTunes storeで日本の映画をレンタルし、Skypeで世界に散らばる同期隊員と会話する。
この状況だけを見れば、青年海外協力隊がいかにソーシャル化しているかがわかるだろう。

青年海外協力隊(JOCV:Japan Overseas Cooperation Volunteers)事業は、1965年4月に日本政府の事業として発足した。発足以来約40年間で80カ国(アジア、アフリカ、中近東、中南米、大洋州、東欧)へ、述べ36,805名(2010年4月30日現在)の隊員を派遣した実績がある。

アジア・アフリカ、ラテンアメリカでの林業専門家として豊富な経験を持つ『開発フィールドワーカー』の著者、野田直人さんは「派遣される地域では、携帯電話もなく、手紙すら届くかわからず、離婚してまで参加を決意する隊員がいた」とOBとして1983年当時の経験を語っていた。

世界各地の様々な情報が手軽に収集できるようになった現代において、今後はソーシャルメディアを活用した国際協力の事例も増えてくるだろう。(オルタナS特派員=原彩子)

※写真は筆者の働くオフィス。セキュリティの為にどのオフィスにも頑丈な鉄格子がついている。



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