東日本大震災の被災地の一つ、宮城県石巻市に事務所を構えるNPO法人フェアトレード東北では、農業生産法人のアルコバレーノファームと東京の各企業との協働で「ソーシャルファーム事業」を始める。

4月25日に東松島市の農場で始められたじゃがいもの芽植え作業


同NPOは震災後から巡回型被災高齢者などに戸別訪問支援を行い、数万件のアンケートと調査を実施。その結果、津波による家屋流失に伴って、半壊や一部損壊認定の家屋の住民はその地域に取り残され、近隣住民とのコミュニティが崩壊したことがわかった。また、炊き出し支援によっても、郊外の仮設住宅の独居高齢者を中心とした入居者におけるコミュニティも崩壊状態にあると判明。

震災以前から自殺対策事業を行ってきた同NPOでは、そうした在宅被災生活困難者や郊外の仮設住宅の独居高齢者を中心とした入居者の孤立死や自殺問題を懸念。「もう一度、庭いじりや家庭菜園を楽しみたい」「働きたい」「友達をつくりたい」という高齢者の声をきっかけに、石巻市北上地域と東松島市大塩地域に農場を設けた。

「震災後、とくに一人で暮らすことが困難な高齢者の方への雇用支援と、失われたコミュニティの再形成、生きがい創りを目指します。公金を利用しない継続的なソーシャルビジネスのモデル事業として活動を行っていくために、じゃがいもなどの各種野菜やハーブを栽培し、それらをこの事業にご賛同いただいた東京の企業2社(ラッシュジャパン、セリュックス)に料理や化粧品などの原材料の一部として購入していただくことになりました。 農作業は4月下旬から開始し、農作業に参加する方の送迎もします」(フェアトレード東北広報担当)

寄付金や助成金に依存せず、自ら活動経費を賄えるだけの収益を作り出すこうしたソーシャルビジネスの試みは、震災後から急激に関心を集めている。社会的課題を解決するために、企業が本業を通じてNPOと組む時代が本格的に始まったのだ。(今一生)

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