静岡県伊東市の漁業協同組合が15年間実施してこなかったイルカの追い込み猟を、今年から再開すると公表したことを受けて、国内外200以上の団体からの抗議が殺到している。同市にある伊豆半島は、2018年にユネスコから貴重な観光資源として認定された場所に与えられる「世界ジオパーク」認定を受けている。イルカの追い込み猟の再開はその理念に反するものだと指摘されている。(オルタナS編集長=池田 真隆)

イルカの展示やイルカショーへの国際的な批判は高まっている 写真は認定NPO法人アニマルライツセンターのサイトから

10月21日には、動物愛護活動を行う認定NPO法人アニマルライツセンターとPEACEの2団体が呼びかけ、23団体が連名で、ユネスコの国際地質科学ジオパーク計画(IGGP)に対し、伊豆半島の世界ジオパーク認定の取り消しを求める要望書を送付した。

さらに、国際的な動物福祉団体の連盟である「Asia for Animals」(中心団体21団体)と、中国本土の鯨類飼育問題に取り組む「China Cetacean Alliance」(9団体)が連名で、同主旨の要望書をユネスコIGGPに対し送付した。賛同団体を含めると183団体が名を連ねた。

伊豆半島のジオパーク認定は、2015年の審査では一度保留となっていた。その理由の一つに、イルカの追い込み猟があった。本年10月1日の漁期から再開されるイルカの追い込み猟では、水族館への生体販売のみを目的としているが、2004年に行われた最後の猟では、生体捕獲を目的として実施されたものの、追い込み作業によって死亡したイルカは食肉として解体されていた。

生体捕獲を目的とした猟であっても、イルカは傷つきパニックで死んでしまうこともある。イルカの展示やイルカショーへの国際的な批判は高まっている。日本動物園水族館協会(JAZA)は、世界動物園水族館協会の倫理規約を受け、野生からのイルカ捕獲を禁止している。

日本における水族館ビジネスは過熱しており、そうしたことを背景に、JAZAから脱退してイルカを野生から生け捕りする水族館が出てきた。イルカの追い込み猟を行っていたのは和歌山県太地町のみだったが、伊東市がイルカ猟を再開することで、「関東の水族館への供給がしやすくなる」と認定NPO法人アニマルライツセンター代表の岡田千尋さんは懸念する。

続けて、イルカを繁殖させては死なせている水族館の罪についても批判した。「伊東漁港は展示用なら良いだろうという発言をしているが、人々の娯楽のために水族館が工夫なしに儲けたいという欲求で行うイルカ猟は、食用よりも悪質。水族館に入れられる動物は、使い捨てにされており、捕獲や輸送や水槽に入れた段階でも死ぬこともある。芸ができないと飼い殺しになり、更に多くが短命のうちに死んでしまう。繁殖はほとんどが失敗している。野生動物の消費を、イルカショーの人気が支えているが、それをユネスコが容認することはあってはならない」。




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