クラウドファンディング・プラットホーム「CAMPFIRE(キャンプファイヤー)」に、昨年の東日本大震災で津波被害を受けた石巻市に住む高田弘さん(67)が漁業復興を目指すプロジェクトを掲載している。

高田さんのプロジェクト、手を取り合って漁業復興を目指す


プロジェクトでは、石巻市牡鹿半島の前網浜で津波により漁船、漁具、家を失ったもと一匹狼の漁師たちが、協業して定置網漁を開始することを目指す。定置網漁を始めるにあたり、海中や海底の瓦礫撤去などの必要があるため、潜水士による調査と撤去作業の経費の一部を集める。

キャンプファイヤーは、2011年6月に誕生したインターネット上のクラウドファンディング・プラットホーム。掲載されたプロジェクトに共感したユーザーから、500円からの少額資金を集めることができる。出資者は支援の見返りとして、プロジェクトオーナーから限定ノベルティグッズや、成果物などを得る。

前網浜はホヤの養殖が主に行われていた。しかし、この度の津波被害でホヤ筏は全滅し、震災前に41隻あった漁船は、支援贈呈された船を含め現在6隻。

前網浜の漁師たちは、今年3月まで日雇い瓦礫撤去の仕事で生活費を稼いでいたが、4月からは瓦礫撤去の仕事がなくなり、無収入状態であった。ホヤの養殖には約3年の期間がかかるので、すぐには収入を得ることが厳しいという。そこで、定置網漁を開始して、収入を得ようと決めた。

定置網漁を行うためには、海底の瓦礫撤去作業が必要になる。そこの費用をまかなうために今回プロジェクトを開始した。「国や県に撤去作業を任せていてはいつになるかわからないので、私たちで動いた」と高田さんは話す。

高田さんがクラウドファンディングを知ったのは、今年2月に見たNHKの情報番組がきっかけ。高田さんの住まいは海から5キロほど離れているので津波被害を免れていた。「私自身は幸いにも、被害を受けなかったが、周りのたくさんの人々が被害を受けていた。なので、何かしたいと思っていた。クラウドファンディングの存在を知ったとき、これならできるのではないかと思い、パソコンの知識はなかったが、勇気を出して連絡した」という。

高田さんは郵政関係の仕事をしていて、漁業には素人であった。高田さんの奥さんがボランティアで前網浜を支援していたので、それが縁で前網浜に住む漁師と知り合いになった。

「震災直後は、本当に日本全国の方々に助けられた。ただ、震災から1年が経過して、絆という言葉がよく使われているが、悲しいことに実際は風化している印象も受ける。まだ、苦しんでいる人が大勢いるので、これをきっかけに少しでもいいので私たちを見守り続けてくれたらうれしい」と想いを語る。(オルタナS副編集長=池田真隆)

高田さんのプロジェクトはこちら



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