小樽市に拠点をおき札幌を中心に展開しているインテリアデザイン事務所ソプラティコA.D.S(北海道・小樽)では、中古什器を再利用してリーズナブルなコストでデザイン、施工をするサービスを行っている。

飯坂健司さん。オフィス内には、リデザインされた家具が飾られている。


什器とは、店舗における商用器材全般の事で、例えばラック、テーブルなどの比較的大型のディスプレイ用器材から、店舗の特徴を出すための小型の雑貨までをいう。サービスはReDesign(アールイーデザイン)と呼ばれ、過去の施工やリフォームにより引き取った倉庫内の中古什器をもとに製作する事が特徴だ。

代表の飯坂健司さん(42)は、かつて様々な分野において極めた技を競い合うTVチャンピオン(テレビ東京)という番組のリフォーム選手権で優勝した経歴を持っており、その芸術性の高さもセールスポイントとなっている。

「良いものを長く使いたいのは誰もが持っている気持ち。ただ、もうすこしデザインというものが注目されてもいいのではないか。その役目を終えて一休みをしていた什器達に、デザインで改めて、役に立ってもらおうという仕事をしているのです」と飯坂さんは語った。

実に多数の店舗が毎日のように新規出店やリニューアルを繰り返している。もちろんその陰には夢破れて撤退を余儀なくされた店舗も少なくない。その一方で什器もあわせて消費、廃棄されていく。

「店舗を新しくするならば、もちろん掛けられる予算は多ければ多いほど良い。しかし、これだけ経済が低迷している中で極力初期の投資は抑える方が望ましい。ただ最近は、安価な量産品を什器に転用している例も目にするが、オーナーのお店に対する想いはその程度のものかと疑ってしまう」飯坂さんは嘆いた。

中古什器を活用することで、デザイン性を落とすことなく無駄を極力排除しながらコストダウンも図ることができる。さらに、オーナーの想いのこめられたデザインクオリティが落ちる事はない。結果、店舗も長続きしていく。今後は住宅分野にも積極的に参入していくのが当面の目標だ。

ソプラティコA.D.Sのチーム運営スタイルも興味深い。様々な得意分野を持つデザイナーたちが登録し、案件毎にプロジェクトチームを組む。なかにはかつて飯坂さんの下で働いていた従業員も独立した個人として登録しているという。

このスタイルにすることで、責任感の強い意思疎通のできるチーム作りが容易になったそうだ。社員を大量に雇い、従業員が安心して働けるのも大事な要素かもしれない。だが、これだけ先がみえない世の中だと、雇用関係の中に存在する依存ではなく、互いの個性を重視した尊重をベースにしたこういうスタイルが増えていくだろうと飯坂さんは予想している。(オルタナ北海道支局長=横山光紀)