「日本では人身取引問題に対する関心が低い。言葉は知っているが、実態までは知らないのが現状。人身取引根絶に向け、一人ひとりの国民の意識改革が必須」と、話すのはNPOポラリスプロジェクトジャパン代表の藤原志帆子さん。

同団体は、アメリカに本部を置く人身取引問題に取り組むポラリスプロジェクトの日本支部である。藤原さんは、アメリカの本部で働いたあと、2004年にポラリスプロジェクトジャパンの創設に関わった。

日本は人身取引の最終地点といわれている。2011年には、買春被害者の女性45人と619人の児童買春被害者が日本政府により確認されている。人身取引に関して禁止する包括的な法律がないので、ブローカーたちは日本に連れてくるのである。

風俗店が並ぶ新宿歌舞伎町。


藤原さんは包括的な法律がないことに対して怒りを感じている。「なぜ子どもを買う日本人がこんなにいるのか、同じ日本人として許せない」という。東南アジアへの児童買春ツアーも、日本人参加者が多数を占める。

人身取引根絶は非常に難しい問題とされている。包括的な法律がないこともそうであるが、人身取引被害者に対する対応が杜撰だからである。まず、日本には人身取引被害者を保護するシェルターがない。さらに、被害者はブローカーによって騙されて連れてこられるケースが多く、不法滞在者として逮捕されてしまう。

警察に助けを求めたことで、捕まってしまうことを恐れ、頼る者がいないのだ。
藤原さんは人身取引根絶に向けてまず必要なのは、国民一人ひとりの意識改革だという。「人身取引に無知な社会である以上、人身取引はなくならない」と話す。

■恋人に騙されるケースも

日本は海外からの人身取引被害者がたどり着く最終地点とされているが、日本人も人身取引の被害にあっている。中には、ブローカーではなく、恋人に騙された女性もいる。

将来を約束した男性から、風俗店で無理矢理働かされて、あげくのはてには、彼氏は彼女が風俗店で働いて得たお金を全て持ち去り逃走した。彼女は精神的にも身体的にも傷を負ってしまった。

国立大学に通っていた彼女は容姿や性格もよかったという。なぜ、彼女をここまで陥れてしまったのか。

藤原さんは人身取引根絶への障壁となっている3つの壁があるという。1つは人身取引被害者が助けを求められるホットライン(政府主導)がないこと。2つ目は、被害者を保護するシェルターがないこと。3つ目は、人身取引被害者を見抜くトレーニングがされていないこと。

この他にも、人身取引を禁止する包括的な法律がないことや、そもそも人身取引の定義すらないことが課題として存在する。

「この現状を変えるためにも、まず知ってほしい。日本で行われている人身取引の実態は世界最悪レベルである。一人ひとりの責任ある行動がこの世の中を変えていくはず」と藤原さんは話す。

先月19日に発表された人身取引年次報告書2012では、日本は人身取引根絶の最低基準を満たさない国に位置づけられた。10年連続であり、コソボとルーマニア、ルワンダと同じで先進国では最低レベルである。(オルタナS副編集長=池田真隆)


■まず、周りの人が変化に気づくこと

人身取引根絶には身近な人が気づけるようになることが、重要な課題とされている。以下は、人身取引被害者を見分ける指標である。この資料は、実際に警察や福祉関係者の研修資料としても使われている。

□行動をコントロールされている
□仕事を変えたり辞めたりできないと言う
□あざや傷などのけがを負っている
□恐怖心をいだき、ふさぎこんでいる
□日本語が母国語でない
□パスポートやその他の身分証明証をもっていない

多くの場合次に挙げるような一見目立たない支配の方法が使われている。
①生活を監視する。:外部との接触を極端に制限し、他人との接触を禁じる
②借金や不当な契約による拘束
③家族や友人、同じ出身地や民族の仲間から孤立させる
④土地勘を持たせない
⑤家族を傷つけると脅迫するなど精神的に拘束する
⑥被害者の家族に、『(強制売春や借金など)被害の状況をばらして、被害者を辱める』と脅迫する
⑦警察などに助けを求めても捕まる、(外国人の場合)強制送還させられる、などと脅す
⑧被害者の金品を没収し、『安全のために』管理することで逃げる気力を失わせる
⑨(外国人の場合)言葉や文化が壁となり、孤立している
⑩(外国人の場合)不法滞在、不法就労の状態にある
⑪(外国人の場合)パスポートを取り上げられている


★ポラリスプロジェクトジャパン求人のお知らせ★
【形態】フルタイム・契約 当初3ヶ月は試用期間とする

ポラリスプロジェクトは、人身取引(ヒューマントラフィッキング)をなくすために、日本と米国で被害者支援、政策提言を行う国際NPOです。日本事務所では下記のとおり事務局スタッフ(広報・支援者サービス担当)を募集しています。

米国で2002年、日本で2004年に設立されたポラリスプロジェクトは両国で人身取引問題に立ち向かう最前線の活動をしている団体として数々の賞を受賞しています。

ポラリスプロジェクトジャパンは小規模ながら、人身取引被害の当事者のための支援活動、および年間3000人 を超える行政・警察や学校関係者への講演活動を行っています。日米で反人身取引活動をリードしてきたポラリスプロジェクトは、情熱的なスタッフやボランティアによって運営されています。

より支援の幅を拡げるため、今回募集するスタッフは、企業や支援者にむけたアピールにおいてのコミュニケーションスキル が特に大切になります。NPOでの経験の有無は問いませんが、人権や女性の権利の分野に強い関心を持ち、人身取引をなくす活動に熱い想いを持って取り組める方のご応募をお待ちしております!

【業務内容】
・啓発(コミュニケーション)事業の統括
oPRの戦略立案
o啓発・PR資料の開発、ソーシャルメディアやウェブサイトを生かしたコミュニケーションの実施
o日本の人身取引問題を社会や関係者に啓発し、日本が直面する社会問題としての認知を高める

•資金調達(ファンドレイジング)業務全般
o人身取引をなくすための活動をさらに広げるための企業協賛・支援者獲得のための業務
o支援者拡大のための調査・広報とサービス業務
oイベントやキャンペーンの企画実施業務
o助成金申請作業や報告業務

•ボランティア・フェローの活動の調整・統括
oオリエンテーション・定期的なミーティングの実施

•事務局業務全般を他スタッフ・フェローと協力しながら実施
o電話応対や事務局運営
o団体内データベースの利用によるデータや寄付金管理

【条件】
-人身取引と性的搾取をなくすための当団体の活動に理解と情熱を持つ方
-英語と日本語で問題なく業務遂行できる方(Oral, Written含む)
-要PCスキル(Microsoft Office)。広報活動(ウェブ、編集、デザイン等)の業務としての経験あれば尚可
-ソーシャルメディアやオンラインでのマーケティング経験があれば尚可

【求める人物像】
-寄付者や企業など、異なった人たちに最適な広報ツールとメッセージを使い、効果的に支援者獲得につなげていける方
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【待遇】年棒制3,000,000~3,500,000円 (経験・スキルを考慮)

【応募方法】 和文履歴書、英文履歴書、志望動機書(和文)をこちらのリンクにあるフォームにアップロードし、必要項目をお書きの上ご応募ください。

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