6月30日、東京・渋谷で映画の配給・上映などを行っているアップリンクが、アルバイトの採用条件の一つに「首相官邸前デモに参加した事がある」を加えた。
「以下の項目に3つ以上該当する方のみ応募下さい」という条件の中の一つだが、同社取締役の浅井隆氏にその意図を電話取材すると、こんな答えが返ってきた。
「思想・心情というより、行動力を問う条件の一つ。エクセルを使えるのと同じ。ネットだけでなく、町へ出ようと。デモに行くのは今日では普通にポピュラーなことではないか」
毎週金曜日に行われている「脱原発」の官邸前デモは、40年以上前のデモのように逮捕者が出たり、就活の際の踏み絵になることもない。普通の人の普通の行動になっている。そこに隔世の感を覚えるのは、60代以上だけかもしれない。
これは、「脱原発」と主張し、行動することが特別な思想・心情の持ち主のやることではないというパラダイムシフトが浸透しつつある証左だろう。
アップリンクでは「100,000年後の安全」や「核の傷:肥田舜太郎医師と内部被曝」などの「脱原発」映画を上映してきたが、「脱原発」へのパラダイムシフトは多くのシーンで見られるようになった。
城南信用金庫(東京・品川)は省電力のために10万円以上の設備投資を行った個人に1年もの定期預金の金利を年1%とする預金「節電プレミアム預金」を新設。若者に人気のファッションブランド「アンダーカバー」の代表・高橋盾氏も音楽ユニット「YMO」とコラボした「NO NUKES」の文字入りTシャツを発表した。
『金色のガッシュ!!』で有名な人気マンガ家・雷句誠氏は、自身のブログで「原発反対」をきっかけに太陽光とエネファームによるダブル発電を始めたことを明かしている。
音楽界でも、UA氏など、やんばるに集まったママさんアーティストたちによる「割烹着〜ず」が、故・忌野清志郎氏が反原発の詩をつけた「ラブ・ミー・テンダー」の替え歌を元にアレンジして歌い踊っている動画をYoutubeにアップしている。
脱原発の動きは今後、市民の支持の広がりによってさらに高まり、商品やサービスなどの形として新たな市場を形成していくだろう。原発の事故処理における膨大なコストに多くの人が気づくに従って、グリーンエネルギーや省電力などの「脱原発」市場が拡大していくのは、自然の流れなのだ。(今一生)