学生団体LGBT Youth Japanは今年3月、ニューヨークへのスタディツアーを行った。ツアーでは、LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーなど性的マイノリティーの総称)支援を行う先進企業や団体を訪れた。今回は、世界各地で「居場所」づくりを行うMetropolitan Community Churchを訪ねた。
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Metropolitan Community ChurchはLGBTを含むすべての人にとっての居場所となるよう、1968年にロサンゼルスで設立されました。現在は世界各地に約170の教会があり、32,000人以上のメンバーが参加しています。地域ごとにLGBTだけでなく固有のマイノリティにも包括的な対応をとっており、世界各地に「安心できる場づくり」を行っています。他国での多様性理解を示す教会のロールモデルにもなっています。
私たちは日曜日のservice(讃美歌を歌う、牧師さんのお話しを聞く)に参加し、その後、少し参加者の方とお話しをしてから、牧師さんに事前に用意した質問に答えてもらいました。その後、教会のYouthの方とも交流する時間がありました。
Metropolitan Community Churchは町中の建物内にありました。今回教会を訪問すると聞いて、教会に訪れたことも知識もなかった私は少し不安があったのですが、serviceの楽しい雰囲気にその不安は一気になくなりました。まず入ると参加者の皆さんが暖かく挨拶で出迎えてくださり、有志のメンバーによるピアノ、ドラム、ギターの生演奏と暖かい讃美歌の歌声からは「自分が歓迎されている」と心から感じることができました。
当初私が「教会」や「宗教施設」に抱いていた閉鎖的なイメージはいっさいなく、どんな人でも安心して過ごせる場がそこにありました。コーラスの人の脇には手話通訳者の方もあり、聖書の読み上げもスペイン語・英語で行われ、様々なマイノリティへの配慮が伺える度に安心感が増していきました。また、service後に参加者はイエスの肉であるパンを受け取ることができたのですが、キリスト教徒でない私たちもそれに参加でき、よりオープンな雰囲気を感じることができました。
キリスト教圏では多くの同性愛嫌悪者は聖書の「ソドムとゴモラの話」から同性愛嫌悪を主張するのですが、それに対しても牧師さんから直接お話しを伺うことができました!とても簡単にまとめると、解釈と視点の問題である、とのことでした。聖書には多くの話が記されており、そのなかには様々な教えが記されているのにも関わらず「同性愛嫌悪」の解釈だけが肥大して現代にまで訴えられ続けている点には個人的にも疑問があったので、NYに暮らす牧師の方からそのように伺うことができた経験は貴重なものでした。(だからこそ現代でも絶対に揺るぎないもの、のようにいわれているのが興味深いのですが、それは日本の「伝統家族」に近いものなのでしょうか?)
Metropolitan Community Churchとしては、すべてのアンチ行為や暴力はキリスト教で認められていないもので、それらには「思いやり」と「愛」で返すという教義に従った対応をとっているようです。昔と比べると暴力行為を受けることは減っているようですが、南アフリカなどにある教会は危険な場面もあるそうでした。
一番心に残っていることは、教会だからこそできたこととして、「marriage equality」に対して同じ宗教の土俵の上からほかの解釈を用いて戦うことができた、というエピソードです。「アメリカでは宗教を理由にしたフォビアが根深い」という固定観念の強かった私には目から鱗でした。
逆に教会だから戦えるフィールドがあるんですね。自身の信じる宗教で認められていない、ということが自己嫌悪の理由となってしまっているLGBTの人々にとってなんて力強い存在なんだろうと思いました。全体を通じて極めて冷静かつ慈愛に満ちた空間でした。日本の仏教界にもこのような雰囲気を持ち帰ることができないかと現在試行錯誤中です。
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