札幌市の住宅街に小さな店を構える「自然素材の菓子工房 ましゅれ」(札幌市白石区)は、楽天市場の洋菓子部門で常に1位を獲得する人気店。競争の激しい楽天部門で1位をとる為には、店長による徹底したこだわりがあった。
「創業は2008年、食品偽装事件などで、食材が注目をあびている今だったら、自然食品、特別栽培、無農薬等、こだわり抜いた店舗を出店しても何とかなるのではないだろうか。独立についてずっと抱いていた想いがあったので半ば賭けでしたが、思い切って出店しました」店長の加藤美香代さん(35)はこう切り出した。
「私自身もアトピーを持っており、幼少期から自然食品に接してきました。ですから、普段食べる食べ物に、安心できる素材を使うのは当たり前でした。でも、20代の頃は、食材をいつも選んできた親に対する反抗もあって、みんなと同じようなものを食べてみたこともあるんです。でも、体にはやっぱり合いませんでした。やっぱり自分自身が、安心して美味しく食べられるものを提供する事が一番である事を強く感じたのです」と話す。
無添加を謳い、調理法にこだわっていると大きく掲げている店でも、扱う素材の生産方法や、生産者までこだわり抜いて使用している菓子店は少ない。在庫リスクを抱える中で利益を出すためには可能な限り原材料費を抑えなくてはいけないし、商品の見栄えをよくしたいという店側の都合もある。
一方、例えば、ましゅれの作るケーキのスポンジは、やや茶色くくすんだ色をしている。餌にこだわり抜かれその結果として黄色が抑えられた卵と、ミネラル豊富な三温糖。これも見栄えよりもコストよりも、自分が食べたい安全な素材でつくったお菓子を提供したいという想いからだ。
当初、加藤さんはインターネットで小さく通販を始めた。食に対する意識が高まったとはいえ、本当に市場に受け入れられるかどうか不安だったからだ。最初の商品も発送しやすいようにとロールケーキから扱いだした。
試行錯誤の中で、あるコンサルタントとの出会いがきっかけで、サイト作りから発送まで改めて見直し、今では、商品アイテムも増え日本全国沖縄までも発送するまで成長した。こだわりを守る為に、開発を断念した商品もある。
「せっかく良いものを提供している生産者さんが持続するためにも私たちが頑張らないといけないのです。」加藤さんは語る。生産者、ケーキを買った人、運ぶ人、食べた人、家族、お菓子作りに関わるすべての人を大切に感じている様子が伺えた。シンプルなこだわりと愛情が、ランキング1位となる理由なのだ。
これからのましゅれの目標は、現在の店をもっと忙しくし、ハンディキャップを持つ妹と共に働く場所を創出すること。創業時からの夢であり、ましゅれの原点でもある。加藤さんのこだわりと挑戦は続く。(オルタナ北海道支局長=横山光紀)
ましゅれページ
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