テレビで、代々その土地に住む先住民族の人たちの暮らしを見ることが増えてきました。伝統工芸の織物や装飾物、独自の文化、自然豊かな大地…。その美しさに、心奪われる方も多いと思います。

しかし、中には「貧困」や「差別」の壁を抱え、未来を模索する人たちがいます。「教育」こそ、未来への鍵——。フィリピンに誕生した、アジア初の先住民族の若者のための学校「パムラーンセンター」。そこで学ぶ生徒たち、そして日本から彼らを支援するNPOを紹介します。(JAMMIN=山本 めぐみ)

■「差別」と「貧困」、「文化の消失」に苦しむ

フィリピンの先住民族の若者たち。長い間、差別や貧困に苦しんできた

フィリピンには、約110の先住民族が暮らしています。それぞれ独自の文化や言語を持ちながら、長い間差別され、国からも十分な支援を受けられない状態にあったといいます。

「国の開発から取り残され、水道やガス、電気、医療、交通や教育などの公的サービスが整備されず、放置されてきた歴史がある」。そう話すのは、認定NPO法人ホープ・インターナショナル開発機構(愛知・以下ホープ)の職員で、フィリピンの教育事業を担当する大村絵玲奈(おおむら・えれな)さん(29)。

「今でこそ偏見は減ってきているものの、先住民族出身の若者たちは『差別されたくない』と出身を隠して生活するような状況」だと言います。

ホープの職員でフィリピンの教育事業を担当する大村絵玲奈さん(右)と、のファンドレイザーの松浦史典さん

若者たちが自分たちの部族に誇りを持てないまま、古くから継承されてきた独自の文化が失われていってしまうという課題がありました。また、インフラが整備されていない中、先住民族の多くは農業で生計を立てており、季節や天候によって収入が左右され、貧困が蔓延していることも課題でした。

学習環境は整っておらず、子どもたちは軒先や木陰で本を読み、宿題をする

アジア初・先住民族の若者のための学校

フィリピン・ミンダナオ島ダバオ市のサウスイースタン・フィリピン大学に併設された「パムラーンセンター」は、アジア初の先住民族のための高等教育機関です。先住民族の若者たちが、自分たちの文化に誇りを持ち、それを生かしながら現代社会と共存する社会を目指して設立されました。

パムラーンセンターの正門。左奥に見える建物はサウスイースタン・フィリピン大学の校舎

先住民族のコミュニティーに合わせ、①小学校の教員になるコース、②社会起業家ついて学ぶコース、③持続可能な農業について学ぶコース、④自分たちの民族や他の民族の歴史・文化について学ぶ人類学のコース、の4つのコースがあります。

生徒たちはここで学びながら、自分たちの部族に伝わる文化をどう生かして行くか、実践的な知識を身につけることができます。

大学の敷地内のカフェでは、生徒たちが開発した商品などを実際に販売。こちらは先住民農家によってオーガニック製法で栽培されたコーヒー豆

「教育」が、次世代の「希望」に

これまでに卒業した182人の生徒の中には、部族に伝わる文化を生かしたビジネスを起業したり、自分の村の農業のやり方を変え、安定した収入を得られるようにしたりと、村に戻って活躍する生徒たちも増えてきました。

「パムラーンセンターで学ぶことを通じて、先住民族出身の若者たちが部族の誇りを取り戻し、その誇りと学んだ知識を自分たちの部族に還元することで、希望がどんどん生まれていく。それがパムラーンセンターのビジョンであり、私たちホープの願い」。そう話すのは、ホープの職員であり、ファンドレイザーである松浦史典(まつうら・ふみのり)さん(35)。

真剣な表情で授業を受けるパムラーンセンターの生徒たち

ホープでは毎年、パムラーンセンターで学ぶ15人の生徒の学費を経済的に支援し、彼らの夢を応援してきました。また、「古くなってきた寮を新しくしたい」、「自分たちの村に伝わる薬草を育てるためのハーブガーデンを作りたい」といったパムラーンセンターからの要望も支援し、先住民族の若者たちが希望を持って学ぶことのできる場を提供してきました。

生徒たちは4年間在学した後、卒業後2年間は、自分の村に戻りボランティア活動をすることが義務付けられている。彼らの絆は深く、卒業後も助け合う良い仲間なのだそう

一人の生徒の希望を繋げるチャリティーキャンペーン

チャリティー専門ファッションブランド「JAMMIN」(京都)は、ホープと1週間限定でキャンペーンを実施し、オリジナルデザインのチャリティーアイテムを販売します。

マニラから150kmほど南下したところにある「ミンドロ島」という島の先住民族出身の若者であり、パムラーンで学ぶ生徒の一人、エヴェリン・タイワン・パサドさん(20)。

今回のチャリティーで、「社会起業について学び、そこで得る知識やアイディアを生かして、自分の村の人たちを助け、貢献することが私の夢」と語るエヴェリンさんの1年分の学費・18万円を集めます。

「JAMMIN×ホープ・インターナショナル開発機構」1週間限定のチャリティーデザイン(Tシャツのカラーは全8色)

エヴェリンさんの夢を応援するためにJAMMINがデザインしたTシャツには様々な「種」が描かれています。かたちの異なる種は人間の「多様性」を、種から顔を覗かせる芽や花は、教育を受ける中で花開いていく「夢」や「可能性」を表現しています。

Tシャツ1枚につき700円がホープへチャリティーされます。販売期間は7月24日~7月30日の1週間。JAMMINホームページから購入できます。

JAMMINの特集ページでは、フィリピンの先住民族が抱える実情や、パムラーンセンターで学んだ卒業生のその後を詳しく掲載中。あわせてチェックしてみてください。

教育が、次世代への「希望」の種に。フィリピン・先住民族の若者たちへ高等教育を提供〜ホープ・インターナショナル開発機構

山本 めぐみ(JAMMIN):
京都発チャリティー専門ファッションブランド「JAMMIN」専属ライター。JAMMINは「チャリティーをもっと身近に!」をテーマに、毎週NPO/NGOとコラボしたデザインTシャツを作って販売し、売り上げの一部をコラボ先団体へとチャリティーしています。

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