元陸上選手の為末大さんが、ロンドン五輪男子サッカー3位決定戦の終了後に韓国の朴鍾佑(パク・ジュンウ)選手がピッチ上で行った政治的宣伝活動について、厳しく言及した。

パク選手は試合終了後のピッチ上で、「独島はわが領土」と書かれた紙を掲げ、その行為が五輪憲章に違反している可能性があるとして問題となっていた。国際オリンピック委員会(IOC)のロゲ会長は12日、パク選手へのメダル授与を保留すると発言した。この事態に対して、国際サッカー連盟(FIFA)が事情聴取を開始し、9月中旬までに対応を決めるとされている。メダルの授与はFIFAの対応後に決まる。

話題を集めた為末さんのツイート。リツイート数は6000を超える。


問題とされているのは、パク選手の行為が五輪憲章に違反しているかどうかである。五輪憲章とは、IOCによって採択されたオリンピズムの根本原則、規則、付属細則を成文化したものである。

五輪憲章では、「人種、宗教、政治、性別、その他の理由に基づく国や個人に対する差別はいかなる形であれオリンピックムーブメントに属する事とは相容れない」と記されている。

為末さんは12日、自身のツイッターで、「私は韓国選手の行動に憤りを感じるが、それは日本人としてではなく、一人のオリンピアンとして感じている。なぜなら彼が攻撃したのは日本ではなく、オリンピックの精神自体だから。オリンピズムの根幹に関わる事だから、IOCもここは勝負所だと思う。彼らの理念は建前だったのかどうかが試されている」と投稿した。

このツイートは12日に投稿されたが、これまでに6000件を超える反応が寄せられている。他にも、「結局の所、スポーツ、オリンピックの本質的価値は何なのかという話で、ここに何らかの意図が入り込む事で、オリンピックの中立性、純粋性が失われる。それはひいてはオリンピックを貶める事で、スポーツ自体への社会からの尊敬を失わせる(8月12日)」という投稿がされている。

日本の対応については、「そして日本人の立場として考えても、日本として抗議するのは得策じゃないと思う。もう一つ次元が上の目線から、オリンピズムの本質を諭すようにIOCに意見を出すべきだ。島の問題ではなく、世界中が大切にしているものを貶めた問題として扱うべきだと思う(8月12日)」と話した。

島の所有問題として議論するのではなく、世界中で大切にしている五輪憲章を貶めた問題として、日本は抗議すべきだと提案している。

韓国代表団は12日に帰国し、記者会見を行った。選手らはメダルを身につけておらず、問題とされている行為については触れられなかった。

今回の行為以外にも、スポーツにおける日韓戦では様々な因縁がある。2011年カタールで開催された男子サッカーのアジアカップでは、韓国のキ・ソンヨン選手がPKで得点を決めたあとのパフォーマンスで猿マネをし、人種差別問題として話題となった。

さらに、2009年に開催された野球の国際大会であるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では、日本戦に勝利した韓国代表がマウンドに国旗を立てる行為が話題となった。キ・ソンヨン選手やWBCでの韓国の行為は世論で注目を集めたが、処分が下されることはなかった。

この度の行為についても、IOCがどのような対応にでるのか注目が集まっている。かつて、1968年のメキシコ五輪では、五輪憲章に違反したとして、トニースミス選手とジョンカルロス選手が除名処分を命じられた。両選手は、男子200メートルの表彰台で黒い手袋をはめて登場し、拳を高く掲げた。この行為が黒人差別に対する抗議活動とみなされたのだ。ちなみに両選手は黒人であった。(オルタナS副編集長=池田真隆)