肥満になる原因は貧困にあるという。途上国で肥満者が増加している背景を、開発メディアganasの記者関桃子氏に寄稿してもらった。
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NPO法人「アジア太平洋資料センター(PARC)」の佐久間智子代表理事は2011年11月12日、都内で開かれた公開セミナー「飢餓を考えるヒント-第4回肥満と飢餓-」(主催:アフリカ日本協議会、ハンガー・フリー・ワールド、日本国際ボランティアセンター、明治学院大学国際平和研究所)で、「近年、途上国や貧しい人々の間で肥満者が増加している」との調査結果を報告。飢餓と肥満が共存する途上国の深刻な食料問題に警鐘を鳴らした。
裕福な人が健康を維持するために、より新鮮で栄養バランスのとれた食事を選ぶことができる一方で、貧しい人は「安い、早い、便利」な食事を選ばざるを得ない生活環境にある。結果として、肥満や糖尿病に悩まされる貧困層が増加する。言い換えれば、一握りの富裕層が「健康」を買い占め、それ以外の大多数の貧困層が「不健康」に至らしめる食事をとらざるを得ない状況にある。
■飢餓と肥満に苦しむ途上国
こうした食の「南北格差」は先進国の中にも見られるが、より深刻なのは、飢餓と肥満が併存する途上国だと佐久間代表は強調する。
貿易自由化により欧米の安価な穀物が大量に流通した結果、アフリカをはじめ多くの途上国では主食を安い輸入穀物に依存。穀物の国際価格変動の影響を強く受ける事態に陥った。
また、欧米諸国は余剰の農作物で糖類を製造。これを使った清涼飲料水やファーストフードを途上国に輸出することで、途上国の人々の健康を蝕んでいるというのだ。
加害者であるのは欧米諸国だけではない。冷夏に見舞われた日本は94年、外国からコメを緊急輸入したが、これによって低級なコメの需要まで玉突き式に高まり、最低ランクのコメを輸入していたセネガルは世界市場からコメを調達できなくなった。その結果、多くの人が餓死したという。「知らない間にわれわれも飢餓の加害者となっている」と佐久間代表は指摘する。
■農民に入るのは販売価格の1%
途上国の多くは、外貨獲得のために商品作物の生産に特化しているという実態がある。この背景にあるのは、欧米に植民地化された歴史、債務返済のためは外貨が必要という現実だ。輸出する商品作物はわずか5品目しかないナイジェリアはその一例だ。
佐久間代表が問題視するのは、これらの商品作物を生産した農民が手にする金額は、商品として店頭で販売される価格の1%にも満たないことだ。これに追い打ちをかけるように、過去30年で6割も価格が下がったコーヒー豆をはじめ、商品作物の国際価格は1960年代から低下している。
「穀物の自給もできない。商品作物をいくら作っても利益は搾取される。これで一体どうやって貧困から抜け出せというのか」。途上国の人々の声を佐久間代表はこう代弁する。
■途上国が穀物を自給できる環境を!
穀物の国際価格は今後も高止まりする可能性が高い。こうした現状から、先進国の間には自国の食料の生産拠点としてアフリカの肥沃な農地を争奪する動きも出てきた。また、コメ以外の穀物の多くを輸入に頼る日本も、間接的にだが途上国の穀物輸入をより困難にしている。
佐久間代表は「途上国の食料問題は、途上国だけの努力で達成できるものではない。途上国の人たちが穀物自給を実現できる環境をまずは世界全体で整えていく必要がある。さもなければこの問題は根本的に解決しない」と講演を締めくくった。
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