NPO法人BLUE FOR TOHOKU(ブルーフォートーホク)は18日、福島県内の児童養護施設の子どもたちを対象に、東京で就業支援とミニ運動会を行う「おいでよ!東京2014」を開催した。ボランティアスタッフとして参加した社会人と交流することで、子どもたちに将来の「キャリア」について考えてもらうことが狙いだ。子ども一人ひとりにボランティアスタッフが付き添い、ひと夏の思い出をつくった。(オルタナS副編集長=池田 真隆)

ミニ運動会の最終種目である綱引きでは、ボランティアで協力した力士たちも混じって熱戦が繰り広げられた=8月18日、豊洲公園で

ミニ運動会の最終種目である綱引きでは、ボランティアで協力した力士たちも混じって熱戦が繰り広げられた=8月18日、豊洲公園で

当日参加したのは、福島県内の4施設から来た60人ほどの小学生。午前中は、職業体験施設「キッザニア東京」で遊び、午後は豊洲公園でミニ運動会を行った。同企画へのボランティアスタッフとして、社会人80人ほどが集まった。子どもたちには、最初から最後まで、ボランティアスタッフが一人ずつ付き添い、交流を図った。

「キッザニア東京」内のエコショップを体験する子どもたち

「キッザニア東京」内のエコショップを体験する子どもたち

ブルーフォートーホクが同企画を開催したのは、今年で3回目。企画の目的は、子どもたちに「将来就きたい職業を考えてもらうこと」だ。同団体の小木曽麻里代表は、児童養護施設の子どもたちの課題として、「将来の夢が描けないこと」と指摘する。

理由は、大人と接する機会が少ないことや、親からの虐待を受けて施設に入った子どももおり、「大人」に抱くイメージが悪いということがある。小木曽代表は、「遊びながら大人と話すことで、少しでも大人に対するイメージが変わるきっかけになればうれしい」と話す。

さらに、施設卒園後の進路も課題として挙げる。児童養護施設で保護されている児童は18歳になると卒園しなくてはならない。施設を卒園するに当たり、生活支援として日本財団や新聞社などから200万円を受け取る。だが、この200万円だけでは、資金的に自立していくことへの不安は消せず、大学や専門学校に進学する割合は18.2%(厚生労働省2008年調査)と低く、73.4%が就職をする。

しかし、就職をしても離職率は高い。幼少の頃に受けた虐待や、施設に入ることで大人との接点が少なくなり、 コミュニケーションを避けてしまい、存分に就職活動ができないことや、大学や専門学校に通えないので、自分の適正な職業が分からないことが原因とされる。

また、頼る親がいないことや、転職を繰り返すうちに、保証人との距離を子どもたちの方からとっていくようになり、お金を借りることすらできないこともある。

この社会的問題の解決のために、「企業や大人たちの支援が必須」と小木曽代表は訴える。同企画が成立した背景には、有給休暇を取って参加した80人ほどの社会人ボランティアと、協賛企業の存在が大きいという。

たとえば、徹夜で準備をしたボランティアスタッフがいたり、協賛企業の1社である伊藤忠商事は、キッザニア東京へのチケット人数分と、参加した4施設へそれぞれ25冊ずつ、伊藤忠記念財団が選ぶ児童図書100冊を提供した。また、グローバルに事業を展開する同社が今回協賛するにあたり、10人の外国人ボランティアを初めて招集し、次代を担う子どもたちへ異文化に触れる機会を提供した。

小木曽代表は、「人と資金の問題を解決できる仲間を募集しています」と呼びかける。目標は、福島県内にある全7施設の子どもたちに、同企画を体験してもらうことだ。