大学生を初め若者の進路に変化が起き始めている。卒業後に一般企業に就職ではなく、世界一周、NPOへ就職、起業という様々な進路を選択する若者が増えている。日本とハワイを行き来しながら暮らし、独自のライフスタイルを送る本田氏から、オリジナルな人生を選択する若者たちへのメッセージを聞いた。(聞き手・オルタナS副編集長=池田真隆)




■逃げても自由は手に入らない

——2004年頃からハワイと日本のデュアルライフを送っています。人と違うオリジナルな人生を送る本田さんは、時代の流れに逆らうことへの意義をどう感じていますか。

本田:そもそも意義や価値観は人によって違います。なので、時代の流れに背くことは、性格や資質上向いている人がやればいいだけのことだと思います。無理してやることではありません。

みんなと同じことをやることの方が居心地がいいと思う人はたくさんいます。まず、時代の流れに背くことが自分に向いているのかを一度考えてから動いてほしいと思います。

今の仕事や現状が嫌だからという理由で、自由に働くことを目指して、会社を辞めたり、自分探しで世界に旅立つのは、後で後悔してしまうのではないかと思います。

自分に向いているのか考えてから決めてほしいです。

——オリジナルな生き方を求める若者が増えたことによって、ノマドブームや自由を求める傾向が若者たちの間で見られます。自由に働くことが向いている人とそうではない人の違いは何だと思いますか。

本田:現状が嫌だから、自由になりたいと願う人は向いていないと思います。逃げても自由は手に入りません。明確な目標を持ってから自由に生きる選択肢を選ばないといけません。

それにインターネットが発達して、世界中の人とつながれるようになった今の社会は、明確な目標を持った人には働きやすい世の中になっていると思います。

——自宅で働くことができたり、勤務時間を自由に選べたりと、社員を自由に働かせているベンチャー企業も増えています。フリーランスだけでなく、会社員も自由に働く人が増えています。今後はどのような社会になっていくと思いますか。

本田:能力がある人にとっては、働きやすくなってくると思います。しかし、当たり前ですが、全員が自由に働くことはできません。自由に働きやすい時代ではありますが、厳しい時代でもあるのです。

なぜなら、自由に働いても、成果を生み出すことができなければ生きていけないからです。会社が求めている人材は、成果を出すことが前提で、自由に働ける人です。

社員をサーフィンに行かせるパタゴニアも、勤務時間の20%を社員の自由時間に提供するグーグルも、入社するにはかなりのハードルがあります。自由の定義を、「遊びたい」だけや「楽しみたいだけ」と捉えている人にとっては厳しい時代だと思いますね。

■生き方は言葉では表せない

——本田さんはビジネススキルであるMBAを取得するために、アメリカ留学をしていましたね。留学時は一日3ドル以下の極貧生活を送っていたそうですね。

本田:アメリカで極貧生活を送ったことで、チャレンジすることに躊躇しなくなりました。たとえ失敗しても、1日3ドルで生きていけることができると身をもって体感したので、リスクを恐れなくなったからです。

——留学時代の苦労が成果となって表れているのですね。

本田:実は、そこまで辛いとは感じていませんでした。たしかに、極貧生活でしたが、自分がやりたいと思ったことだったので、楽しめていましたね。

——若くして、自分オリジナルな人生を追求する若者たちへメッセージをお願いします。

本田:まず、日本に生まれた人には選択肢で、多くの働き方があると知っておく事が前提として大切です。その上で、自分にどんな生き方が向いているのかを考えることです。

今は「ノマドブーム」と騒がれているかもしれませんが、言葉に捉われすぎないでほしいです。生き方は言葉では表せません。どのように働きたいかを、言葉や常識に捉われずにイメージしてほしいです。

ただ闇雲にオリジナルな人生を目指すことは危険です。人は必ずしも、オリジナルに生きなくてはいけないわけではありません。人と同じように生きてもハッピーに生きられることもあります。

確かに、人と違う生き方は、一見格好よく映るかもしれません。ただ、それが向いているのか考えてほしいです。流行に左右されるのではなく、自分がどうしたいのかを考えてほしい。

私も最初は、みんなと同じレールに乗りました。新卒で就職して13年間働いてから、仕事と遊びの垣根のない自由な働き方になりました。だから、自分がやりたいことが定まるまで焦らなくていいと思います。


本田直之
レバレッジコンサルティング株式会社代表取締役社長兼CEO シティバンクなどの外資系企業を経て、バックスグループの経営に参画し、常 務取締役としてJASDAQ上場に導く。現在は、日米のベンチャー企業への投資 事業を行うと同時に、少ない労力で多くの成果をあげるためのレバレッジマネ ジメントのアドバイスを行う。 著書に、レバレッジシリーズをはじめ、 『Less is More 自由に生きるために、幸せについて考えてみた。』 『ノマドライフ 好きな場所に住んで自由に働くために、やっておくべきこと』などがあり、 著書累計200万部を突破。韓国、台湾、中国で翻訳版も発売されている。 東京とハワイに拠点を構え、1年の半分をハワイで生活するデュアルライフを 送っている。 また、経営者を中心としたトライアスロンチーム、Team Alapaを主宰。 サンダーバード国際経営大学院経営学修士(MBA) 明治大学商学部産業経営学科卒 (社)日本ソムリエ協会認定ワインアドバイザー アカデミーデュヴァン講師 上智大学非常勤講師

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