札幌市の放置自転車の台数は全国でもワースト4位。放置自転車は歩行者の通行の妨げになるだけではなく、街の景観を崩すなど多くの問題を抱えている。札幌市は駅前の駐輪場を増やすなど、課題解決に取り組んできたが解決には至っていなかった。しかし、そこに現れた地元の企業とNGOとの取り組みが効果をあげている。

1つの自転車を大勢で使用するシェアサイクル


会員登録すると札幌市内各地のポート間を自由に乗り降りできる自転車シェアリングサービス「ポロクル」。サービスが開始されてから2年。街のいたるところにポートができ、市民の新しい足として活用されだした。

事業展開しているのは建設コンサルタント会社のドーコン(札幌市)の子会社「ドーコンモビリティデザイン(以下DMD)」。民間独自で事業展開し、自転車の管理運営を学生メンバーが主体の環境NGO「ezorock」に委託している。

「未来を担う若者たちがポロクルの運営を通じて、より良い社会を創造していくきっかけとなれば嬉しい。」と話すのはDMD社長の安江哲さん(60)。安江さんは、社会インフラ整備等の仕事を通じて培って来た技術を、これからの未来へ活かしたいと考えこれまで抱いていた想いを語り始めた。

「街づくりは地域に住む人々と協力し合いながら、コミュニティやサービス、人材など多くの副産物が生まれるような新しいサービスが必要。多くの人たちが知恵を出し合えば実現可能だ」と動き出したのが2008年。



東京大学の有識者や地元の企業、NGO、環境省などの協力を得ながら、組織の垣根を越えて夢を追いかけた。安江さん自らが、自分を育ててくれたドーコンの企業理念「豊かな人間環境の創造」の実践者となった。

そうして「街をよくする」事を真剣に考えて一つずつ形作られ、自転車シェアリングサービスというアイデアが生まれた。仮想実験やモニタリングを重ね、ようやく2011年にDMDを設立しサービスを開始した。

現在、市内のポートは40個所、自転車の台数も250台に増え、個人会員は約5400人に増えた。街中には企業の営業車が多く走る。そこで、法人にも広く呼びかけ、現在は200社が導入している。企業にとってはスムーズな交通手段としてだけではなく、コスト削減や、CSR活動の一環としても好評を得ている。

ポロクルに乗る事が、社会や街、環境に対し目を向けるきっかけとなる。自らが「まちづくり」に参加しているという意識も生まれてくるので双方にとって良い仕組みだ。

しかし札幌は豪雪地域の都市であり、サービス提供ができるのは約半年。このサービスを持続するためには、会員の増加だけではなく、新たな付加価値の創出が今後の課題だと安江さんは締めくくった。

「乗ってみると本当に便利」と、話すユーザーが増えている。これからもポロクルで市民のライフスタイルや地域コミュニティに新たな価値観をもたらしてくれることに期待が膨らむ。(オルタナS北海道支局特派員=石田香織)


・会員登録はWEBまたは登録カウンター迄
■ポロクル登録カウンター
札幌市中央区北1条西4丁目札幌ノースプラザビル地下1階
「どさんこ商品研究所」内
■ポロクルWEBサイト
http://porocle.jp/