毛皮を使ったデザインを得意とする志賀亮太氏(27)は、昨年パリで開催されたエシカルファッションショーで日本人として、初めて優勝した。

エシカルファッションとは、環境や社会、人に配慮した「エシカル」な価値観で作られた服のことである。動物の皮を剥いで作る毛皮を使うこと事態、エシカルとは正反対の価値観ではある。しかし、彼の作品が評価されたのは、自然死した動物の毛皮を使っているからである。

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「生きている動物の毛皮を剥ぐと、剥ぐ瞬間に動物たちはグッと身体に力を入れる。だから、硬い毛皮になってしまう。寿命をまっとうし、自然死した動物の毛皮は無駄な力が入っていないので、とても柔らかい」と、志賀氏は話す。

そもそも志賀氏が毛皮を使うようになった背景には、故郷福島での生い立ちが影響しているという。「夏はバーベキュー、冬はスキーをして遊んだ。周りを山と海に囲まれていたので、自然の中で生きることが私のアイデンティティになった」と話す。

自分のアイデンティティを突き詰めたとき、「自然との一体感だった」と、話す。
作る服のコンセプトもアイデンティティに従い、「人と自然と動物の共存」を重視している。生きている動物の毛皮を身につけることで、それを感じて欲しいという。

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19歳で単身海外へ 

エシカルファッションショー以外でも、アメリカ、ドイツ、ニュージーランド、シンガポールでコレクションを発表し、数々の賞を受賞している。ここまでの道のりを志賀氏に振り返ってもらった。

デザイナーを目指そうと思ったのは、19歳の時。「もともとはバイヤーになりたいと思っていた。知り合いの服屋がパリに買い付けにいくということで、勉強のため着いて行った。そこで、偶然、「ヨウジヤマモト」のショーを観覧した。その時に、デザイナーの素晴らしさに感動し、目指そうと決意した」と、話す。

2007年の夏、21歳だった志賀氏は大学を休学して、ベルギーのアントワップに1年間修行に行く。「留学費用も十分になかったし、英語も話せなかった。多くの店をまわり、住み込みで雇ってほしいと交渉した」と話す。

あるお店と出会い、そこに住み込むことに。しかし、働かせてはくれなかったので、アントワープロイヤルアカデミィーに通う学生の卒業制作の手伝いをしながら暮らした。

そこでは、ベルギー独特の価値観を教えられたという。「一言でいうと、ベルギーの服作りの価値観はデザイナーの生き方そのものが反映されている。よく、『恋をしていないから、こんな服しか作れないのだ』と怒られた」と、振り返る。恋をしていると、生地の選び方や縫い方など、一つひとつが変わってくるという。

2012awjk01 モダールストレッチポンチョジャケット 49140円(税込)


大学卒業後、イタリアミラノでアントニオ・ベラルディ氏のアシスタントに

大学を卒業後、志賀氏は、イタリアミラノに渡る。パリコレなどにも複数出展している世界的な有名ブランドを作ったアントニオ・ベラルディ氏のアシスタントデザイナーとして働くこととなる。

大学在籍時代に、数々のファッションショーに出展していた志賀氏は、審査員を務めていたアントニオ氏と交流があった。アントニオ氏のもとで働かせてほしいというメールを送ったら、『あなたの実力はわかっている。まずはバイトとしてうちへ来ないか』という返事をもらったという。

それから、約2年間、ミラノで過し、2010年、日本に帰国した。現在は、自身の名前を使用したブランド「RYOTA SHIGA」を設立し、東京を拠点に活動している。

デンマークのサガファーから自然死した動物の毛皮を取り寄せて、アイデンティティを生かしたデザインで勝負している。服のテーマは、「もののけ姫」だと話す。

「服を通して、自然や動物との共存を感じてほしい。ヒトが持つ潜在能力を引き出せれば良い」と、服に込める思いを話す。(オルタナS副編集長=池田真隆)


◆「RYOTA SHIGA」は日本橋三越2F「スペース2」にて、9月11日(火)まで販売中

◆ 10月渋谷ヒカリエで限定販売
期間:2012年10月26日(金)~29日(月)11:00~20:00
      ヒカリエ8階で行います。2012AW の全商品が販売される。