ロンドン・パラリンピックの期間中の8月27~9月2日、東京・表参道駅のコンコース(B3出口付近)で障がいをもつ選手たちの肖像が並ぶ写真展が開催されていた。

表参道駅に展示されていたパラリンピック選手たちの写真


通常は広告枠になっている壁面に、20名20点の大型写真が見られた。都内在住のプロカメラマン・宮本直孝氏(51歳)によるパラリンピック写真展であり、JPC(日本パラリンピック委員会/東京・中央)の公認事業だ。

JPCによると、「宮本さんから協会に写真展示の提案があり、後援させていただきました。展示については、宮本さんご自身が発表の場として東京メトロさんと交渉されたそうです」という。

個人で広告媒体料を支払い、展示を実現させた宮本氏に、今回の企画の経緯を尋ねた。




――なぜ、パラリンピックの選手たちを撮影されたのですか。

宮本:2010 年に女性誌の表紙を飾るモデルたちの写真展を東京・青山のスパイラルガーデンで開催し、写真集「Cover Girls」を出版した時に無償で出演してもらったのです。

だから、写真集の印税収益のすべてをどこかに寄付しようと思っていたら、知花くららさんからWFP(国連の食糧支援機関である国連世界食糧計画)を教えてもらって、150万円ほど寄付したのですね。

その後、モデルたちが参加したWFPの「赤いカップ」のキャンペーン(※)があり、「オリンピック選手でやったらもっと影響力があるのでは」と考えたのですが、そのうちモデルではないパラリンピック選手をきれいに撮りたいと思い始めたのです。

――撮ってみた感想を教えてください。

宮本:実際に会ってみたら、十分かわいい女性に、かっこいい男性が多かったですよ。選手たちは、東京近郊だけでなく全国各地にいますから、静岡や大阪にも行き、今年の6月から8月の間、2ヶ月程度で撮影しました。

あえて競技をしているところではなく、ふだんあまり見られない姿を撮りました。

――表参道駅で展示することになったのは、どのような背景があったのですか。

宮本:みんなが見られる場所ならどこでもよかったんですね。プロのモデルを起用したスパイラルの写真展では8000人程度も見に来ましたけど、パラリンピック選手だとそこまで集まらないでしょう。

だから、関心がない人も見られる場所が良かった。でも、新宿駅や銀座駅ではちょうどいいサイズの枠がなく、表参道駅にしたのです。





今回の作品は今のところ写真集として出版される予定はないそうだが、宮本氏の公式サイトで見られるようになるという。

氏は自分のfacebookのウォールに、こう書いている。
「思いどおりにならないこの世の中で恨んだり後悔したり嘆いたりそんなことをし続けてもプラスにならないと運命を受け入れ、前を向き、残された能力を目一杯駆使している彼らはうらやましいほど充実して見えます」

※WFPの学校給食では、一日一度の食事もとれずに飢えや栄養失調で命を落とす世界の子どもたちにおかゆなどが配られており、食器として赤いカップが使用されている。この赤いカップは学校給食がもたらす希望の象徴で、「わずかな食糧が子どもの人生を大きく変える」というメッセージを伝えている。(今一生


●宮本直孝氏の公式サイト
http://www.naomiyamoto.com/