シータス&ゼネラルプレス主催のダイアログセッション、「CSR元年から10年~これからのCSRについて考える」が9月26日都内で行われた。イベントには企業のCSR担当者を中心に、NPO・社団法人等から100名近くの参加者が集った。

ダイアログセッションには、CSR/財団/NPO等から多様な8名が登壇した


NPO法人ミラツク代表理事西村勇也氏のファシリテーションのもと、セッションはシータス&ゼネラルプレス執行役員の山吹善彦氏の講演に始まり、その後登壇者らによるダイアログが行われた。

ダイアログセッションには、CSR/財団/NPO等から多様な8名が登壇。話したい人が自分でマイクをとって話していくという、ユニークな対話の場がつくりあげられた。

〜これまでの10年「一番変わったのは企業」〜

この10年で一番の変化は、企業が動くようになったことである。特に、震災は日本企業がCSR活動を見つめ直し、行動に移す大きなきっかけとなった。

日本財団CSR企画推進チームリーダー町井則雄氏は「世界の企業の中で日本は環境分野以外低調。震災時の取り組みは多様性もあり、自分たちは何をすべきか考えた。この10年でCSRというものが企業の中で文化の一つになった。戦後の課題だらけの中で日本企業が成長してきたこと、日本企業が忘れていることを思い出せば良いのではないか」と話す。

一方で企業側からは、「成功してきたかという問いには疑問である。取り組みは進んだが、社会のサステナビリティを確保するまでには至っていない。むしろ逆方向に進んでいる」という声も聞かれた。

10年かけてようやく動き始めた企業、これからの10年は実際に解決していくフェーズに入っていくことが期待されるが、そこではマルチステークホルダーとの恊働がポイントとなるのではないだろうか。

〜これからの10年 「新興国・途上国」と「マルチステークホルダー・組織と個」〜

CSR界においても新興国・途上国で波が起きている。この10年は先進国中心にCSRが進んで来たが、昨今インドでは情報開示が進み、CSRの月刊誌も始まっているそうだ。

—CSRに携わる人は離職率が高い?—

CSRの仕事は社会との接点が多いせいか、会社を離れてしまう人も多いようだ。このことの是非については議論が分かれた。

「社会を変えたい人材が育ち、実際にアクションを起こしていくことは社会にとってプラスの影響を与える」が、一方で「前向きになった社員が会社の中でできる仕事がないのは寂しい」という意見も。

あの世界的デザイン会社IDEOでは、自社でNPOを作っている。「もっと社会に貢献できる仕事をしたい」と思った社員は、希望すればそこで働き、また本社に戻ることが出来るようだ。

各企業は、もっと社会に貢献したいから辞めたいと思った人達に、会社の中でできる方法、会社に残りながらできる新しい雇用形態を作っていくということはできるのかもしれない。

— ESR(Employee Social Responsibility:社員の社会的責任)の集合体がCSR —

CSRという考え方をある程度社会に根付かせることができたこの10年、CSR部を作ったことは意義のあることであったが、
「企業がCSRという部署を作って、CSRはそこがやるということ自体が間違っていたのでは?CSR部が頑張れば良いという形にしたために上手く行かなくなったのでは?」という問題提起があった。

これからの10年は、「会社でのポジションはそれぞれあるが、実は社員一人ひとりの中に多様性があり、一人ひとりがマルチステークホルダーである。ESR(employeeの社会的責任)の集合体がCSRであり、社員を巻き込んでいくことが必要である」

「社員一人ひとりが自分が普段やっていることで実はCSRと呼ばれる活動があることに気がついていない。それを気付かせてあげることも必要なのではないか」

という意見のように、CSRという言葉や部署を取り払い、個々の問題意識からの行動として取り組まれていくことが理想かもしれない。

会の締めくくりに、この日のダイアログセッションの内容が参加者全員、一人ひとりのメッセージとして模造紙に貼られていった


最後の登壇者挨拶の中に、「今日のようなゆるい場に可能性を感じた。まじめにステークホルダーエンゲージメントをやるよりもこういうところからイノベーションが起きるのではないか」という言葉があったが、企業が「CSR」の一貫として「ステークホルダーダイアログ」を実施しなくとも、今回の参加者がそれぞれの組織に持ち帰り自分自身の問題として、組織の強みを活用しながら、社会課題を解決して行くことができる。この模造紙の中にこれからの10年を大きく変えるイノベーションのかけらが散りばめられているような気がした。(オルタナS編集部員=山田衣音子)