2012 年4 月日本初出店以来人気を得るアイスクリーム店、ベン&ジェリーズ。「アイスクリームで世の中を楽しく、より良く」という、創業時から変わらぬ考えを持ち続けてきている。そんな彼らが、日本展開の責任者である中川晋太郎氏の右腕としてインターンシップを募集し、学生と共に日本でのソーシャルミッションの実現に動き出そうとしている。(聞き手・オルタナS 編集部員=山田衣音子)




■インターンそのものがソーシャルミッション

——今回インターンシップを「ソーシャルビジネス」というテーマで実施した背景について教えてください。

中川: ベン&ジェリーズは創業当初からソーシャルベンチャー・マインドを強く持っています。現在はユニリーバのグループ企業ですが、未だにその価値観を持ち続けています。社会的使命・製品における使命・経済的使命の3つのミッションのうち、どれかが足りなくても、どれかが突出していてもだめなのです。ソーシャルミッションだけでなく、株主やステークホルダーに利益を出すところも追求してきました。

——「インターンシップ」という形で参加者を募集したことの理由を教えてください。

中川:理由は、大きく二つあります。1つ目は、インターンシップということ自体がソーシャルミッションだからです。ベン&ジェリーズに関わって行く中で、若い人中心にソーシャルビジネスが盛り上がっていることを肌で感じました。

ボランティアではなく、ビジネスとして行っていくことで、持続性を持たせ、コミュニティが少しずつでも良くなって行く方法に個人的にも可能性を感じております。そのことを若い人たちに体験して頂きたいと思っています。

この経験を経て、彼らが就職するのか起業するのかわからないですが、日本だけでなく世界がより良い方向に向かって行けば良いと思っています。

2つ目は、若い人の方がソーシャルに関して意識が高いからです。そんな彼らのアイディアが欲しいのと、今みんながどこに問題意識を持っているのかを探りたいのです。

ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティング株式会社 マーケティング ー ブランドビルディングマネージャー 中川晋太郎さん

■今後のソーシャルビジネス展望

——日本でも若い人の社会貢献意識が高まっていると感じられたのはなぜでしょうか。

中川:4月に行われた共同創業者のジェリー・グリーンフィールドの来日特別講演会でのでき事が強くあります。募集を開始してすぐに200席近くが埋まり、立ち見でも可能かとの問い合わせもあったため、出せるだけイスを出して、当初の予定を上回る参加者を受け入れました。

更に驚いたのは、質問タイムのときです。会場の3分の1がすぐに手を上げていました。これは海外では良く見る光景ですが、日本では珍しいのではないでしょうか。このときに、日本でのソーシャルビジネスの盛り上がりを強く感じましたね。

——日本での「ソーシャルビジネス」展開について、既に行っていることなど教えてください。

中川: 国際フェアトレード認証を受けたアイスクリームは日本初です。気軽なアイスクリームを使って、フェアトレードを広めていきたいと思っています。また、日本で使用しているブラウニーは障がい者を雇用しているスワンベーカリーから購入しています。
ベン&ジェリーズが利益を上げることでスワンベーカリーのビジネス拡大へ貢献し、ベーカリーの認知を高め、足を運ぶ人が増えればと考えています。

——今後の展望について教えてください。

中川:これからの活動としては、大きく3つあります。

1つ目は、店舗単位でのソーシャルミッションがあります。
お店のクルーには社会貢献への意識を持ってほしいです。例えば、表参道店では、表参道地域で活動しているgreen birdの清掃活動への参加も行いたいと考えており、これらのアイディアとしては以下の3つで考えています。

①アイスクリームの提供
②募金
③人手としてお店のアルバイトを使ってもらう。その間もアルバイト代はきちんと支払う。

2つ目は、マーケティング活動やキャンペーンと絡めない永続的な活動です。
ここはまだ模索中ですが、震災復興も大きな枠組みとして検討しています。「公平性」をテーマにして活動していきたいですね。例えば農業、酪農、人権問題などに焦点を当てたいです。

3つ目は、マーケティング活動やキャンペーンと絡め、ブランドとして楽しい形で消費者を巻き込む活動です。
例えば、「先週の台風で街がぼろぼろになっているから誰か手伝ってほしい」などと、SNSで手伝いが欲しい人に書き込んでもらいます。その声をベン&ジェリーズが拾い上げ、「誰か手伝ってあげて下さい!」と呼びかけ、同時に現場でのアイスクリーム配布や、フリーチケットの提供などができればいいなと考えています。


◆取材後記

中川氏は最後に、2つの視点からインターンシップについての意気込みを語った。

1、ベン&ジェリーズとして
日本上陸以来お陰様でビジネスは堅調。しかし、ソーシャルビジネスの方は、アメリカでは「何かちょっとイイコトをしている」という印象があるのに対し、日本での認知度はまだ高くないので、インターンの人の力を借りて盛り上げて行きたい。

インターンの活動規模を拡大させて、学生にももっと経験の場を提供できる様にしていきたい。営利企業が余ったお金で植林等をするのではなく、それをすることが利益にもなるし、同時に世の中も良くなるような取り組みが、例えば日本の一部上場企業にも実験的に広まればと考えている。今回の取り組みは小さいながらその第一歩として捉えている。

2、個人として
学生のエネルギーは初心を思い出させてくれる。そんな刺激の面でも期待をしている。このミッションはこれから最終面接をへて厳選された1、2名の学生と共に11月中旬〜12月のスタートとなる。熱い想いと無数のアイディアを語る中川氏。そこにフレッシュな学生が加わり、ソーシャルブランド「ベン&ジェリーズ」が日本で築き上げられて行く様子に今後も注目したい。