六本木にあるITベンチャー企業TIMERS inc.(タイマーズ)が14日、飲食店のまかないを無料でもらう代わりに、自社のIT技術・アイデアを提供する新プロジェクトを開始した。まかないとIT技術の物々交換期間は約半年間。六本木周辺の飲食店とお金を介在させない関係でつながりを持つ。
同社は2012年5月に、博報堂、DeNA出身の25歳の3人で創業された。カップルが2人だけで使うアプリ「Pairy(ペアリー)」などを開発・運営しているITベンチャーである。
プロジェクトを企画した目的は、六本木の街との関係を築くためだ。タイマーズのCOOである田和晃一郎さんは、「業界は違えど、同じ地域コミュニティを形成するメンバー。ITベンチャーと地域のお店がもっと新しい関係を築くことができるのでは」と、話す。「ランチに行っても、飲食店の方とは会話もなく、ただ食べて終わりの関係だった。このプロジェクトを通して、有機的なつながりに変えていきたい」
まかないに限定したのは、飲食店のあたたかみが感じられる料理だからという。田和さんは、田原総一朗さんや糸井重里さんらの著名人をはじめ、1年間で約2000人以上が訪れたシェアハウス「トーキョーよるヒルズ」に住んでいたメンバーの一人。
同シェアハウスは、今年10月でなくなってしまったが、そのときの経験から、「エリア・スペースに紐づいたコミュニティ」という視点は、普段の企業活動の中でも大事にしていると言う。
物々交換という古くから残る暖かみのある概念を、どうすれば現代に適した形で残せるかを考えた結果の一つがこれだった。
「物々交換のような人間らしさを感じられる文化・慣習は、繋がりの力が再認識される時代だからこそあらためて掘り下げてみたいと思った」という。「大手ではなく僕らのような規模感の会社でしかできないことだからこそ、やりがいとおもしろさがあると感じた。企業に限らず、個人でも提供できる価値があれば、地域社会との新しい繋がり方を楽しめる可能性があるのでは」
タイマーズが提供するIT技術・アイデアは、ウェブサイト制作やリニューアル、ソーシャルメディア活用のコンサル、ITを使ったPRのアイディア提供などである。
まかないとIT技術・アイデアの物々交換を希望する飲食店を12月10日まで募集し、決定後から半年間プロジェクトが開始する。飲食店は提供されるIT技術と引き換えに、13時から16時の間、社員に対して期間限定の「社員食堂」のような形態でまかないを基本毎日提供する仕組みだ。(オルタナS副編集長=池田真隆)
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