16日に控えた衆議院議員総選挙。若者の投票率低下が叫ばれる中で、投票日に投票所へ行くことができない人のために設けられたさまざまな投票制度がある。

衆議院選挙は16日に投開票される

例えば期日前投票は、投票日前であっても投票日と同じ方法で投票を行う事ができる仕組みで、前回、平成21年の衆議院選挙では、全国300の小選挙区で有権者全体の13.45%に当たるおよそ1400万人が利用した。

今回の選挙でも、前回と同じ時期に比べて減少してはいるものの、既に全有権者の2.44%に当たる254万7359人が期日前投票を利用しているようだ。(総務省調べ、公示翌日の5日から9日までの投票者数)

そして期日前投票以外の投票制度として、不在者投票という制度が存在する。これは仕事や旅行などで、選挙期間中、選挙人名簿登録地以外の市区町村に滞在している人が、滞在先の市区町村の選挙管理委員会で投票を行う事ができるという制度である。

不在者投票は、告示日の翌日から投票日前日まで有効な投票制度で、まず、自分が選挙人名簿に登録されている選挙管理委員会に郵便を送るまたは電話をかけ、投票用紙・投票用封筒を請求する。

選挙管理委員会に、不在者投票用の受付があり、そこで不在者投票を行える


これらが届くと、近くの市区町村の選挙管理委員会へ持って行き、そこの不在者投票記載場所で、投票用紙に記入をし、封筒に入れ、署名などをする。そして立会人の署名を受けて、不在者投票管理者に提出し、投票完了となる。(手続きは、各市区町村によって異なることがあるので、事前にホームページなどで確認する必要がある)

このように、不在者投票は煩雑な手続きを必要とするが、制度を利用することで住民票以外の場所で投票することが実質可能となる。

そもそも本来、投票するための投票所入場券は、各市区町村の選挙人名簿に登録されている人のみに届く。

選挙人名簿に登録されているのは、3カ月以上その市区町村の住民基本台帳に登録されている人であり、住民基本台帳と別の場所に住んでいる人は、住んでいる場所で投票を行うことができない。

「地方から大学進学とともに上京してきた」
「就職して最初の勤務先が地方で、単身赴任で働いている」
ということはよくある話に聞こえるが、転入届を出して住民票を移してから3カ月以上経っていなければ、住んでいる場所で投票を行う事はできないのである。

また、奨学金の手続き上や、大学卒業後に地元で就職予定であることなどから、若者にとって住民票を移すことが難しい場合もある。勿論手続きが面倒のために住民票を移さないという人もいる。

そのような人たちにとって、住民票と異なる場所に住んでいることが、投票へ行かない理由の1つとなっていると言える。

そういった状況の中で、不在者投票を利用し、手続きを踏むことは、滞在先でも投票を行う事を可能にさせるように見える。しかし、法律上、そして選挙管理委員会の見解では、実はこれを認めていない。

公職選挙法では、住所は生活の本拠が置かれた場所と解釈され、大学生や社会人にとって、生活の本拠は地元ではなく、あくまで学生生活や勤務を行っている場所と判断される。

それにもかかわらず、住民票を移動せずに、選挙権を行使していないと見なされ、不在者投票を行うための投票事由に該当しないという見解なのだ。

実際は、不在者投票を行う事ができる場合もあるが、投票率が低いと言われる中で、現行の投票制度は若者にとって投票しやすい環境を提供しているのだろうか。

勿論、住民票をきちんと移動することが一番ではあるが、奨学金など諸事情により移動しにくいという声もある。仮に、不在者投票が行えても、手続きは普段の投票と比べてかなり手間を要する。

若者が投票に行かない理由として、「住民票を移動していないから」ということが挙げられるのであれば、それは若者が意識を向上して、住民票を移動する必要もあるが、同時に制度そのものが投票しやすいように変わる必要もあるのかもしれない。(オルタナS編集部員=堀川雄太郎)


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