もし、政治に無関心だった若者が投票に向かうようになったら、どのような日本になるのだろうか。例年、20代の投票率は3から4割台で、声が反映されず、政治との距離を感じる若者が増えている。この現状を打破しようと、若者の意識変革に向けて活動する団体がいる。

2008年4月に設立された政治系学生団体ivote(アイヴォート)は20代の投票率向上へ向けて、現役議員と学生との飲み会イベントや、女性議員と女子大生で将来について話し合う女子会などを開催し、政治と若者の距離を近づけている。

学生団体ivoteのメンバーたち

60代の半数以下に近い20代の投票率は、全体の割合の1割に過ぎない。若者の民意が政治家に届かない状況に、同団体副代表の堀川雄太郎さん(東京工業大学3年)は、「教育や就職、社会保障についてなど、きちんと若者の意見が届く政治を期待しています」と話す。

「60代の投票率が最も高いという現在では、政治はどうしても高齢者の方に耳を傾けがちです。その結果、世代間格差なども広がり、ますます若者にとって将来が不安な状態に陥っていると思います。若者の投票率が上がれば、政治家は若者が声を上げていると気づき始めます」

フェイスブックを使って、若者の投票率を上げる活動を行う団体もある。「I WILL VOTE(アイウィルボート)」だ。運営するのは、20代後半の社会人4人。働きながらでも世の中に何か良いことはできないのかと考えた際に、間近に衆議院選挙があったので、若者の投票率を向上するプロジェクトを行おうと思いついたという。

「若者の投票率は低いが、フェイスブックのユーザー数は多い。新聞で広報するよりも、フェイスブックで上手く伝えられれば響くのではないか」と、中心メンバーの一人である望月優大さん(27)は話す。

同プロジェクトでは、「I WILL VOTE」と書かれたパネルを持った人物の写真などをフェイスブック上でシェアすることで、若者たちが投票に行く意識を促す取り組みである。これまでに、俳優の伊勢谷友介さんや、NPO法人フローレンス代表理事の駒崎弘樹さんなど複数の著名人も登場している。

写真後ろの右が菊地勇太、左が望月優大 パネルを手に持つのは、NPO YouthCreate代表の原田謙介さん


望月さんは、「若者の投票率が上がることで、政治家が若者を意識した政策を考えるようになってほしいです。また、選挙に行ったことがない若者が政治に興味を持つことで世の中がどう変わっていくのかを見るのも楽しみです」と、話す。

ソーシャルメディアを使った呼びかけは他にもある。IT大手のヤフーは、「選挙行こうよ!」と題したソーシャルキャンペーンサイト「選挙行こうよ!Your vote changes the future」をオープンした。

選挙に行ったことを、ツイッターやフェイスブックで拡散することで、友達に投票へ行く呼びかけをする仕組みだ。また、同サイトでは、選挙へ行ったという声を集計し、その人数を常時カウントしている。

選挙行こうよ!Your vote changes the future

ヤフー「みんなの政治」プロデューサーの白石久也さん(38)は、「政治家に国や地方の問題解決を全部おまかせしてしまう政治から、若者を中心とした国民が、国や地方の問題を『自分ごと』として考え、その解決に参加していく政治に変わっていくことを期待しています」と話す。

メールを使い投票を促す取り組みもある。若者と政治をつなぐ活動を行うNPO YouthCreate(ユースクリエイト)は、「メールプロジェクト」を行っている。

同プロジェクトでは、投票に行く理由や意気込みを、メールアドレスとともに事前に登録すると、投票日当日の朝に、登録した内容のメールが届き、投票に向かう意識を喚起する仕組みだ。

メールプロジェクトの流れ


ユースクリエイト代表の原田謙介さん(26)は、「若者の投票率が上がれば社会や政治システムが変わる原動力となる。今の日本社会のシステムは戦後から人口が増えていく中で作られた。人口が減少している今は、システムを変える必要がある。若者たちが主体的にそのシステム作りに参加してほしい」と、話す。

東京8区で衆院選に出馬する山本太郎さんも、若者が政治に積極的に参加する意義を述べる。

「政府は一番若い人の力を恐れています。若い人たちが選挙に関心を持たないように、放射能問題をはじめ多くの情報を極力公開していません。情報を知ってしまえば、若い人たちが怒り出すから隠すのです。自分たちの未来を守れるのは自分の一票だけです。絶対に無駄にしないでほしいです」

衆議院選挙の投票日まで、あと3日。若者の声で、社会を動かしてほしい。(オルタナS副編集長=池田真隆)