野村総合研究所は22日、「NRI学生小論文コンテスト2012」の表彰式をホテルラフォーレ東京で開催した。大学生の部の大賞には山本泰弘さん(京都大学大学院地球環境学舎修士課程2年)の、「政経社会系教育重点校『スーパーソーシャルハイスクール』」が選出され、特別審査員の池上彰さんは、「科学の力をマネジメントできる人材が必要」と評した。
NRI学生小論文コンテストは2006年から毎年開催されており、今年は過去最多の1,363本の応募があった。同社は、CSR活動の柱として「人づくり」を掲げ、若い世代の育成に取り組む。その一環として、若者に日本や世界の未来に目を向ける機会を、同コンテストを通して提供している。
大学生の部、留学生の部、高校生の部と3部門に別れており、今年の共通テーマは、「自分たちの子ども世代に創り伝えたい社会」である。審査は、NRIの社員合わせて100人以上が参加したほか、特別審査委員の池上彰さんや最相葉月さんが行った。
大賞を受賞した山本さんは、文科省が指定した科学系人材の育成を重点的に進める「スーパーサイエンスハイスクール」を例にあげ、政経・社会系人材の育成に特化した「スーパーソーシャルハイスクール」を提案した。
山本さんは、「スーパーサイエンスハイスクールでは理科離れを防いだ。一方、文系の教育は軽視され、政策・意思決定などの面で優秀な人材が育っていない。原発事故やエネルギー問題など、日本国内で抱え込む社会課題を解決するには、科学的・技術的知見をどのようにマネジメントするのかが必須である」と話す。
山本さんの作品は、特別審査委員の池上彰さんや最相葉月さんを含め、多くの審査委員から好評を得たという。東京工業大学でも教鞭を取る池上彰さんはこう評した。
「社会科を暗記科目だと思い込んでいる学生は多くいる。暗記科目ではないと証明し、学び方を構造的に変えてほしい。スーパーソーシャルハイスクールでマネジメントに特化した人材を育成していく必要がある」
■単身で日本に留学した中国人学生が大賞
留学生の部で大賞を受賞したリンユウジョンさん(武蔵野大学グローバルコミュニケーション学部1年)は、高校を卒業した2008年に日本に留学に来た。
留学の理由は、「中国で教わった日本が、本当かどうか確かめたかったから。中国では、日本に反感を抱かせるような教育をしている」と、リンさんは感じたのである。
親や周りの友人から反対されたが、単身日本へ。日本語も一から学び4年目、日本人の友達も増えてきて、「中国で教えられたこととはまったく違う」と話す。
リンさんの家族も、日本に対するイメージは良くなってきたという。今年、反日デモに巻き込まれて、リンさんの姉の日本製の乗用車が燃やされてしまった。しかし、次に購入した車も日本製を選んだ。リンさんが、日本で体験した話を聞いていたから、日本に対する信頼を失わなかったのである。
リンさんが書いた論文のタイトルは、「お互いのコミュニケーションのため〜世界の未来である君たちへ〜」である。「この論文の目的は、中国と日本の若者に留学生の声を届かせることである。これから、日本と中国の関係のためにも、日本で日中の若者の交流をはかっていきたい」と話した。(オルタナS副編集長=池田真隆)
・NRI学生小論文コンテスト2012
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