シェアすることで、自分の成長につながると直感的にわかっている若者は多い。良い情報を得た時には、一人で独占するのではなく、周囲に伝える。若者たちはシェアすることで何を得たのか。ソーシャルメディアで情報を発信し続けるスプリー代表の安藤美冬さんと、ネット上で共感したユーザー同士で旅を作るtrippiece(トリッピース)を運営する石田言行(いしだいあん)さんに話し合ってもらった。(聞き手・オルタナS副編集長=池田真隆)

石田言行さん(左)と安藤美冬さん(右)


——お二人が持つシェアする感覚を教えてください。

安藤:私自身は情報のシェア、モノのシェア、働く場のシェア、家のシェア…そうしたシェアのあり方に抵抗はないのですが、同世代でも上の世代でも、こうした「シェア」にあまりピンとこない人もいるかもしれません。

石田さんは23歳なので、私と10歳違いですから、石田さんと私を比べてみてもシェアに対する感覚は異なると思います。ちなみに、携帯電話を持つようになったのは何歳のときでしょうか。

石田:中学1年生のときですね。

安藤:やっぱり早いですね(笑)。私自身の個人的な体験では、電話と言えば一家に一台ある黒電話でした。

それから時代が進むにつれて、電話もコードレスになり、パーソナルな連絡ツールとしてはポケベルも登場し、その後PHSや携帯電話が誕生し、フューチャーフォンからスマートフォンへと進化を遂げていきました。

このように「電話」ひとつとってもその形態や機能が目まぐるしく変わっていく時代を生きてきた訳ですが、同じ時代を生きているからといって、同じシェア感覚を共有しているわけではありません。

ソーシャルメディアを、閉じたコミュニティ内で単なる連絡手段として使っている人もいれば、石田さんの事業のように、不特定多数の人と発信をベースに繋がることで、何か新しいものを生み出していく人もいます。これって、何も私の世代に関したことではないと思いますけれど。

石田:そうだと思いますね。「ユーザー同士が共感で繋がり、旅を作る」というトリッピースのコンセプトに共感してくれている人からはすごく支持してもらっているのですが、合わない人には、まったく響きませんからね。

安藤:トリッピースを使って「こんな旅がしたい!」とフラグを立てることによって、「私も参加したい!」と人が集まることにワクワクする人もいるでしょうが、一方で成立するかどうかもわからない旅行に一手間かけて、わざわざ知らない人と旅行に行くことに抵抗感を感じる人もいるのでしょう。旅行に行きたいなら、旅行代理店に申し込めばすぐ成立しますしね。

石田:本当にどっちかですよね。ぼくの場合は、ソーシャルメディアで発信して、人が寄ってきて、今では一つのコミュニティになっています。発言に共感して集まってきた人たちなので、そのコミュニティは居心地が良いです。

実は、中学高校時代ですごく気の合う友人と出会えなかった過去があります。興味を持っていたのは、ビジネスとバドミントンでしたから、同世代の男子でビジネスやバドミントンの話しができる友人はいなかったのです。

ですが、ツイッターでバドミントン仲間を募集したらすぐに集まりました。ちなみに、旅好き仲間も同様に集まりました。ツイッターで居心地の良い空間を作れるようになったのです。

このことがすべての始まりでしたね。この空間を拡大しようとしていくにつれて、人も増えて、ツイッターでの発信力もついてきました。

安藤:ということは、トリッピースを起こす原動力になったのは、「気の合う友達が欲しい」という石田さんのかつての欲求なのでしょうか。(続く)


安藤美冬×石田言行 独り占めではなくシェアして成長する (2/4)
安藤美冬×石田言行 独り占めではなくシェアして成長する(3/4)
安藤美冬×石田言行 独り占めではなくシェアして成長する(4/4)


安藤美冬:
株式会社スプリー代表
1980年生まれ、東京育ち。慶応義塾大学卒業 後、(株)集英社にてファッション誌の広告営業と書籍単行本の宣伝業務経験を積み、2008年には社長賞を受賞。2011年1月独立。ソーシャルメディアでの発信を駆使し、一切の営業活動をすることなく、多種多様な仕事を手がける独自のノマドワークスタイルがTBS系列『情熱大陸』で取り上げられる。また、NHK Eテレ『ニッポンのジレンマ』では30代の若手論客として、フジテレビ『Mr.サンデー』ではゲストコメンテーターとして出演。『自分をつくる学校』の運営、野村不動産やリクルート、東京ガスなどが参画する新世代の暮らしと住まいを考える『ポスト団塊ジュニアプロジェクト』ボードメンバーのほか、日本初のスマホ向け放送局『nottv』でのレギュラーMCや連載の執筆、講演、広告出演など、企業や業種の垣根を超えて活動中。2013年春創刊のシングルアラフォー向け女性誌 『DRESS』では、「女の内閣」の「働き方担当相」を務める。著書に7万部を突破した『冒険に出よう』(ディスカヴァー•トゥエンティワン)がある。
公式ホームページ:http://andomifuyu.com/
Twitter:@andomifuyu

石田言行:
株式会社trippiece代表取締役
1989年9月18日生まれ。中央大学4年。学生NPO法人うのあんいっち元事務局長
trippiece HP:http://trippiece.com/home
Twitter:@ishidaian
Facebook:http://www.facebook.com/ian.ishida


【対談】関連の他の記事を読む
四角大輔×為末大 「若者たちに伝えたい決断の思考法」(1/4)
LGBTカップル恋バナ(1/3) どこでどんなデートしているの?
グリーンズ兼松編集長×ジャーナリスト佐藤慧 伝えることに必要な愛