鳥取県鳥取市の日本海海岸に広がる、鳥取砂丘。1955年には国の天然記念物に指定されました。東西16km、南北2.4kmにも及び、毎年多くの観光客が訪れます。しかし、その美観は「草原化」という問題に直面しています。

 

鳥取砂丘近辺の民家が、砂丘から飛んでくる砂の害に悩まされたため、1970年頃から防風林の植林が行われました。そのことが、砂丘の規模縮小や生態系の変化を引き起こし、また砂の動きが弱まったために、雑草が繁茂し、草原化を進めることとなりました。

 

現在地球温暖化の影響を受け、世界各地では砂漠化が進行していますが、砂丘は砂漠とは異なり、乾燥地ではありません。風によって、絶えず砂が動くために草が生えてこないようになっているのです。

 

幾万年の歳月をかけて自然が創り上げた砂丘に、人間が手を加えたことによって草原化を加速させ、美しい砂丘が失われつつありました。そしてついに、1991年から機会や人手を使っての除草作業が始まりました。また2004年からは、ボランティアによる除草作業も始まり、毎年多くの方が参加をしているそうです。それによって、少しずつ砂の移動が活発になってきています。

 

砂丘には、砂丘独特の動植物が自生しています。除草作業は、景観保護だけでなく、生態系の維持を目的としているのです。除草作業と言っても、もともと自生している植物は残し、外来種であり他の植物を押しのけて成長してしまう植物のみを取り除くため、とても時間と根気のいる作業です。

 

「砂の動く、生きた砂丘に戻したい」という想いを胸に、市民のみんなによって守られている鳥取砂丘。本来の姿に戻り、美しい鳥取砂丘が次世代に引き継がれますように。(オルタナS編集部=大森清香)

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