シェアすることで、自分の成長につながると直感的にわかっている若者は多い。良い情報を得た時には、一人で独占するのではなく、周囲に伝える。若者たちはシェアすることで何を得たのか。ソーシャルメディアで情報を発信し続けるスプリー代表の安藤美冬さんと、ネット上で共感したユーザー同士で旅を作るtrippiece(トリッピース)を運営する石田言行(いしだいあん)さんに話し合ってもらった。(聞き手・オルタナS副編集長=池田真隆)

安藤美冬×石田言行 私たちは独り占めではなくシェアして成長する(1/4)
安藤美冬×石田言行 私たちは独り占めではなくシェアして成長する(2/4)


対談する石田さんと安藤さん


安藤:「トリッピース」での旅は、通常の旅と違う点はありますか。

石田:例えば、トリッピースでの旅中のある選択に意見したのか、していないのかで主体性はまったく変わってきます。

トリッピースでの旅は、コミュニケーションを取りながら旅をします。旅の日程があらかじめ決められたツアーのパッケージを買うのとは違います。だからこそ、楽しむためには、主体性が大事だと思います。

共通の趣味で集まった人には、ドキドキする気持ちや不安もありますが、終わってみると、「また会おう」で終わります。

安藤:参加者の人たちは、どんな気持ちで、何を求めてトリッピースに集まるのですか。

石田;まず前提として、その旅に行きたいという気持ちがあります。その上で、参加者に動機をヒアリングしてみると、「同じような仲間がほしかった」という声が多いです。

正直、日本人は出逢いを第一の欲求に持っています。ツアーを買っている感覚ではなくて、コミュニケーションを取りたくて集まってきてくれています。

安藤:そうなのですね。添乗員はいるのでしょうか。

石田:添乗員はいません。幹事と参加者だけです。旅の企画をした人が幹事になります。一番大変だけど、旅が終わった瞬間にみんなから言われる「ありがとう」という言葉がすごく心地よいです。参加者からの感謝の手紙をもらうこともあります。



——石田さんは、「海外では毎日が非日常」とおっしゃいましたが、非日常空間にいて何か得るものはありますか。

石田:海外にいると裸になっていく印象があります。日本でのぼくは、肩書で縛られてしまうときがありますが、海外だと、肩書きは関係なく、シンプルになれます。そこが好きなところです。

シンプルな状態で語れるので自分の素が出てきます。すると、自分らしさを新しく発見します。そのときに、「あぁ、おれってこういう人間だったのだな」と振り返れます。

日本に戻ってきても、その感覚があるので、物事をシンプルに考えられるようになっていきます。

ちなみに、この前フルマラソンを走ったのですが、20キロ地点以降はかなりきつかったです。ただ、その時の思考は、「走るか、諦めるか」の極論で考えられていました。そういう瞬間は好きですね。

安藤:私は、旅に出ているときが非日常だとは思わないのですね。LCCの台頭や簡便になった海外ホテル予約、そしてネット上の写真や旅日記などのあらゆる情報のシェアによって、旅は昔ほど特別なものではなくなってきましたから。

そうは言っても、しばらく海外を旅した後、日本に帰ってきたときは、何とも言えない感覚に陥るときがあります。空港から自宅に帰る道すがらの、見慣れているはずの景色が、不思議といつもと違って見える。ああ、日本ってなんてユニークな国なんだろうって。まるで日本にはじめてやって来た外国人が感じる感覚ですね。

——お二人はソーシャルメディアで共感を生み出し、今に至ります。共感を生み出すために、気をつけていることはありますか。

安藤:私は、人は感情で動く生き物だと思っています。人を動かせるサービスなどは人の感情にどれだけ触れられているのかが重要だと思っています。共感や応援は、感情がポジティブに触れて「好き」から発せられるもの。逆に批判や否定は、感情が逆に触れて「嫌い」から生まれたもの。でもどちらに「良い、悪い」というものはなくて、人を動かそうと思うなら、「感情の琴線に触れる」ということが不可欠だと思っています。

だからこそ、ソーシャルメディア上では、喜怒哀楽は素直に出します。自分の感情を素直にさらけ出すことで、嫌われることもあるかもしれないけれど、好きになってくれる人もいますから

石田:その通りだと思います。感情で人間は動いています。さらに、共通体験があると共感しやすいですね。人から聞いたことを言っても伝わらないです。

当初トリッピースを立ち上げたときは、多くの批判を浴びていました。でも、ぼくがこのような取り組みをして、良いと感じていたので、その感覚を信じていました。ここで重要なのが、自分が体験をしていたから、言葉に思いを乗せられたことです。

共感を得るためには、言葉に自分の思いが乗っているかが大事だと思います。ちゃんと話せば伝わるものです。

安藤:人の思いは言葉に乗りますすよね、それが例えリアルに顔をつきあわせていなくても。実体験から語られていると、相手に与える印象がまったく違うものです。

——実体験をしたからこそ生まれる言葉には力があります。では、お二人にとって「体験する」とはどういうことでしょうか。『ウォールデン 森の生活』の著者ヘンリー・D・ソローは、「ワインを作ったことがなかった」と言っています。既存の液体を混ぜただけで、それは、「ワインを作った」とはいいません。何かを体験するとはどういうことだと思いますか。


次回は、1月22日(火)に掲載予定です


安藤美冬:
株式会社スプリー代表
1980年生まれ、東京育ち。慶応義塾大学卒業 後、(株)集英社にてファッション誌の広告営業と書籍単行本の宣伝業務経験を積み、2008年には社長賞を受賞。2011年1月独立。ソーシャルメディアでの発信を駆使し、一切の営業活動をすることなく、多種多様な仕事を手がける独自のノマドワークスタイルがTBS系列『情熱大陸』で取り上げられる。また、NHK Eテレ『ニッポンのジレンマ』では30代の若手論客として、フジテレビ『Mr.サンデー』ではゲストコメンテーターとして出演。『自分をつくる学校』の運営、野村不動産やリクルート、東京ガスなどが参画する新世代の暮らしと住まいを考える『ポスト団塊ジュニアプロジェクト』ボードメンバーのほか、日本初のスマホ向け放送局『nottv』でのレギュラーMCや連載の執筆、講演、広告出演など、企業や業種の垣根を超えて活動中。2013年春創刊のシングルアラフォー向け女性誌 『DRESS』では、「女の内閣」の「働き方担当相」を務める。著書に7万部を突破した『冒険に出よう』(ディスカヴァー•トゥエンティワン)がある。
公式ホームページ:http://andomifuyu.com/
Twitter:@andomifuyu

石田言行:
株式会社trippiece代表取締役
1989年9月18日生まれ。中央大学4年。学生NPO法人うのあんいっち元事務局長
trippiece HP:http://trippiece.com/home
Twitter:@ishidaian
Facebook:http://www.facebook.com/ian.ishida


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