パチンコ中毒者の問題解決に向けて、なぜこれほどまでに論じられないのであろうか?

レジャー白書2012によるとパチンコ人口は1260万人。多くの日本人がパチンコを楽しんでいる。一方でパチンコにのめり込みすぎて、借金を抱える、授業や仕事をさぼる、家事・育児を放棄するといった人も少なくない。

本人だけの問題では済まず、多くは友人、家族を巻き込み、周囲の人間を悲しませる。一度でもパチンコにどっぷりはまると、そこから抜け出すことは中々難しい。

「お酒がやめられない」「甘いものがやめられない」「タバコがやめられない」のと基本的には同じである。この問題を解決させるための最も重要なテーマとは何か?

それは「本人がどうやったらパチンコをやめることができるのか?」である。

パチンコ中毒の問題は、時に犯罪や事件、自殺につながるほどの深刻なものである。にも関わらず、正面からこのテーマが論じられることはほとんどない。

本屋に足を運べばこのことがよく理解できる。うつ病から立ち直るための本、禁煙のための本、アルコール依存回復の本などは容易に見つけられるが、「パチンコ中毒から立ち直るための本」は皆無に等しい。

悩んでいる人の数の多さ、深刻さから考えると実に不思議な現象ともいえる。その理由は2点ほど考えられる。

一つは問題解決の方法が明らかになっていないことである。ほとんどの精神科医、社会学者、カウンセラーがお手上げ状態であり、パチンコ中毒から回復するための具体的な提案ができない現状にある。

そのため「パチンコをなくすべきだ」と結論づける傾向にある。「パチンコをなくすべきだ」と主張してもよいと思うが、現実にパチンコがすぐになくらないのであれば、「パチンコが街中で溢れている現状で、どうやってパチンコ中毒から抜け出すのか?」といった現状に即した即効性のある議論が必要である。

そして、もう一つの理由は他のテーマに乗っ取られてかき消されてしまうのである。他のテーマとは、例えば「パチンコはギャンブルであり違法ではないのか?」「パチンコ依存症という心の病気なのではないか?」といったことである。

これらのテーマで議論が行われるとどちら側の意見にも主張できるポイントがたくさんある。それゆえこのような議論は盛り上がりやすい。そして、盛り上がりやすいからこそ、一番大切なテーマがかき消されてしまうのである。

このようなテーマでの議論は中・長期的な視点で考えるならば必要かもしれない。しかし、「今すぐなんとかしたい」と思っている本人や家族にとっては、何ら有用性はない。

パチンコがギャンブルであろうがなかろうが、パチンコ依存が病気であろうがなかろうが、関係ないのである。うつ病の人にとって「どのようにして、うつを治すのか?」、アルコール依存の人にとって「どのようにして断酒するのか?」が大事なのであるのと同様、パチンコ中毒者にとっては「どのようにパチンコ中毒から抜け出すのか」が最も重要なテーマなのである。

もう少し「困っている人をどう救えばいいのか?」という観点の議論が必要ではないだろうか?次回以降から筆者なりの考察を述べていく。(寄稿・本田白寿)


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