役所さんは、「作品で登場するFMみなさんのスタッフたちは、自分たちが被災者でありながらも、町民たちを元気づけている。家や仕事がなくなり多くの悩みを抱えているだろうが、その陽気な姿に勇気づけられる」。
リスナーに語りかけるラジオの奥深さを表現した作品について梅村監督は、「ラジオは言葉で伝えるメディアだが、文字ではなく、人の声で伝える。だから、聞く人は安心する」と話す。
■慣れないラジオに苦戦
宮城県の海沿いにある南三陸町は、東日本大震災によって60%以上の世帯が被災し、8000人以上が避難生活を送ることになった地区である。行政も被災してしまい、市民に情報を届ける機能を十分に果たせていなかった。
そこで、震災から2カ月後、緊急で誕生したのが、災害ラジオ局「FMみなさん」だ。しかし、集まってきた9人は元・サラリーマンや元・ダンプ運転手など、全員ラジオ素人であった。
ラジオ経験がないため、生放送中には失敗の連続。ある時には、ハリウッドでも活躍する俳優の渡辺謙からのメッセージをミスして流せなかったこともある。
慣れないラジオ取材に苦戦し、シングルファーザーの男性は息子たちから「向いていない」と言い渡されてしまう始末。それでも、家族を養うために時給840円の仕事に精を出す。
クリスマスにはモミの木の点灯式イベントを開催したり、町民1000人ほどを集客した、震災で流れた結婚式を開催したりと、少しずつムーブメントを起こすようになり、町民たちを元気づけていった。
■ラジオが心の支え