世界では3人に1人がミレニアル世代(以下M世代)だ。2000年以降に成人を迎えた若者で、コミュニティーへの帰属意識が高く、消費よりもシェアを好む。今、エシカル消費やソーシャルビジネスなどサステナビリティを推進する存在として注目されている。(オルタナS副編集長=池田 真隆)

左から、博報堂の亀田氏、エニグモの須田氏、One JAPANの濱松氏、カルビーの二宮氏

サステナビリティと経営の統合を考えるサステナブル・ブランド国際会議2017東京で、ミレニアル世代からサステナビリティを考えるトークセッションが開かれた。

登壇したのは、カルビーの二宮かおる社会貢献委員長、エニグモの須田将啓代表取締役最高経営責任者、One JAPAN共同発起人・代表の濱松誠氏の3人。ファシリテーターは、博報堂研究開発局の亀田知代子上席研究員が務めた。

亀田氏は、M世代の特徴について、「デジタル&ソーシャルネイティブ」「高学歴だが就職難」、「消費にシビア」、「社会貢献意識が高い」などを挙げた。米国では4人に1人がこの層にあたり、全世代と比べて社会性のある商品を選ぶ傾向にあり、友達や家族とCSRの取り組みについて話をする機会が多いという。

日本のM世代は、「ほかの国と比べると社会性は高くはないが、シェアの意識は高く、新品にこだわらない」と分析する。長時間労働やワークライフバランスなど働き方に関心が高く、在宅勤務や育児休暇など働きやすさを重視する。幸福感が高い点も特徴の一つだ。

M世代が生まれた1980年代からこれまでを振り返ると、「まさにデジタルネイティブ」と亀田氏。1983年にファミコンが生まれ、それ以降、マッキントッシュやiモード、そして2000年代にはアイフォンが生まれ、SNSが急速に発達した。

インターネットテクノロジーが急速に発達し、ライフスタイルを変えていった。一方で社会では、1992年のバブル崩壊、阪神淡路大震災、就職氷河期、リーマンショック、東日本大震災など災害が相次いで起こり、激動の時代を生きてきた。

■働き方に「手触り感」求める

亀田氏は、「M世代の価値観は持続可能な社会をつくるヒントを持っているのではないか」とパネリストに問いかけた。

二宮氏は、新入社員に入社した動機を聞くと、「学校へ食育を教えるために出向いていることに共感したから」と、利益ではない側面で会社を選んでいる社員が多いというエピソードを話した。

大手企業のM世代を中心としたコミュニティー「One JAPAN」を立ち上げた濱松氏は、M世代が好む仕事について言及した。「言葉にすると『社会課題の解決』だが、この人の課題を解決している、貢献しているという「手触り感」のある働き方にやりがいを見出す」。

ファッション通販サイト「BUYMA(バイマ)」を運営するエニグモの須田氏もこの意見に賛同し、「若い人は、自分の仕事が相手にどう貢献しているのか分かるとモチベーションの維持につながると思う」。

生きるコストが下がっているので、本気で社会を変えようと活動している人が一定層いるとした。だが、「儲けを考えていないようで、将来は大丈夫なのか?と心配にもなる」と明かした。

濱松氏は、「特にベンチャーで働く若い人たちは、上の世代の顔色を気にしないで、若いうちから自分の思いに素直になり、動き出す人がほかの世代と比べて増えているのでは」と話した。

■「つながらないと通用しない」

M世代の特徴である、「つながり」についても議論した。つながりやすくなった背景には、スマートフォンの普及があり、SNSでのつながりは消費のあり方も変えた。

須田氏は、「インスタ映えする商品が売れる時代になった」と話す。ある人気タレントがタイで作られた水着を着て、インスタグラムに投稿した。すると購入者が殺到し、工場の製造ラインがパンクしたという。

須田氏は、「M世代はマーケティングリテラシーが高いので、企業の宣伝は嘘くさいと思っている」と言い、単に消費者の1人として見るのではなく、ともに何かをつくっていくパートナーとして、巻き込み方が大切とした。

二宮氏は、お客さん同士で疑問を解決してくれるようになったと話す。「じゃがりこ」に黒い粒が入っていて、「虫が入っている」とあるユーザーがSNSで投稿した。すると、ほかのユーザーが、「それは虫ではなく、皮か芽です」と答えてくれた。

これまでにこの問い合わせは多くあり、同社サイトにも画像付きで紹介している。SNSで解決してくれるようになったことで、お客様相談室への問い合わせが5000件ほど減ったという。

SNSでは、「自分と同じ目線から意見をもらえるので、信頼度が高い。企業からだと、上から目線で、信じてもらえないこともある」と二宮氏。

濱松氏は、「つながることでイノベーションが起こしやすくなる。社外の弱いつながりと社内の強いつながりが大切」と強調した。「オープンイノベーションで企業、大学、行政などが集まり、新しいことをしないと通用しない時代になってきた」とした。立場を超えてさまざまなセクターと協働する「コレクティブインパクトが必要」とし、「サステナブルな未来をつくるには、行動を起こさないといけない」と訴えた。

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