高校家庭科で、「エシカル・ファッション」の教育実践を通じて、エシカルマインドの種蒔きを行っています。家庭科は、高校男女必修科目として、衣・食・住・消費経済、環境、高齢者、保育、生活設計・・などの生活に関わる様々な分野を扱います。
諸分野を、科学や政治、経済と横につなぎ、自分の生活の実践や技術に生かすのが家庭科です。消費者教育では、どのように学んだ知識を「自分ごと」化して日々の生活に生かすのか、が大切であり、家庭科が消費者教育に相応しい理由だと考えています。
一昨年には、全国の教育関係者向けに、全国で初めての「エシカル・ファッション」の授業を公開しました。高校では新しい教育過程が始まり、この4月からは文部科学省検定教科書も刷新されました。
私が編集委員を務めた東京書籍の家庭科教科書には、教科書初の「エシカル・ファッション」についてのコラムや、フェアトレードファッション会社People Tree の創業者サフィア・ミニーさんの、「社会起業家」としてのロングインタビューなどを掲載しました。
この教科書は初の採択シェアNo.1となり、全国の高校生にエシカルマインドが広がれば、と期待しています。
10代の若者は柔軟で教育効果が高く、手応えを感じています。実際、授業後、フェアトレード商品を意識的に購入する生徒、NGO活動を始める生徒、将来の進路を見据えて進学先を決める生徒…などなど、数多く目にしてきました。
昨年末に、「消費者教育推進法」も施行されました。この法律は、「消費者市民社会」の実現を理念として掲げています。
「消費者市民社会」とは、消費者が自らの消費行動に責任を持ち、社会や環境を考えた消費行動をとることによる、持続可能な社会のことです。
つまり、教育によるエシカルマインドの育成を目指しています。従来の消費者教育が、悪質商法などからの消費者の保護、といった点にフォーカスされがちであったのを、今後は消費者が高度に自立して、自発的に社会に働きかけるよう変えて行くための教育が必要とされているのです。
このようにエシカル消費教育の推進に追い風を感じており、一人でも多くの人々に消費の「背景」への眼差しを育てて欲しいと願っています。(寄稿・お茶の水女子大学附属高等学校教諭 同大学非常勤講師 葭内〔よしうち〕ありさ)
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