私が貧困などの途上国の問題に関心を持ち始めたのは高校生のころ。大学へ進み、NGOの世界を目指したいという想いが明確になり、まずは途上国の現状を自分の目で見て感じて、実際に現場で活動体験してみたいと選んだプログラムが、ケニアの難民キャンプでの病院建設ワークキャンプだった。
今から20年近く前の当時は、インターネットやEメールもまだ普及しておらず、何しろ茨城の地方大学にいて東京のNGOの情報もなかなか得られないような環境。アフリカに行くなんて言ったら、周りからは、遺書を書いておけ、生きて帰って来られないかもよ、なんて言われる始末。今ではだいぶグローバル化している日本も、今からたった20年前はそんな状況だった。
NGOの世界に進むことはすでに心に決めていた私だが、大学生という感受性豊かなときに難民キャンプで1カ月活動できたことは、その後、私がこの道で仕事をしていく上で大事な気づきを与えてくれた経験となった。
その後、一般企業に勤めながらNGOに関わったり、企業を辞めてNGO職員になったり、途上国に生活の拠点を移して仕事をしたり、と様々な形で途上国と向き合ってきた中で、貧困問題のあまりの大きさに、これは社会の構造そのものに原因があり、それを正さない限り援助では限界がある、と思うようになっていった。
その思いを経て、いま、フェアトレードを仕組み化することで、より多くの企業が参画できるようにした「フェアトレード・ラベル」の仕事ができることに大きな喜びを感じている。
途上国で感じてきた世界の構造的な歪みを、正に根本から正していこうとするフェアトレード・ラベル。オランダでラベル運動が始まって今年で25年、日本に導入されて20年になる。
今回のお題である「NPOで働いて失ったこと」。あえて挙げれば、仕事がイコール趣味(遊び、という意味じゃなく、好きでやってる・楽しんでる、という意味で)なので、いわゆる「趣味」がなくなってしまったことだろうか。(寄稿・特定非営利活動法人フェアトレード・ラベル・ジャパン事務局長 中島佳織)