気候危機を訴えるグローバル気候マーチが20日、世界150カ国以上で同時に開かれ、日本では23都道府県で5079人が参加した。東京・表参道では約2800人が集まり、半年前に都内で開かれたマーチの人数と比べると規模は140倍に急拡大した。高校生や大学生などZ世代(1996年以降生まれ)の若者たちによるこの「分散型市民運動」を読み解くと「代表不在」「フラット」「多様性」などの特徴が見えてきた。(オルタナS編集長=池田 真隆)

表参道で開かれたグローバル気候マーチ、緑の衣装を着た参加者が気候危機を訴えた

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” open=”no” style=”default” icon=”plus” anchor=”” class=””]「地球のことを考えたら、未来について考えないわけにはいきません。未来について考えたら、子どもたちについて考えないわけにはいきません。だから子どもの声は真剣に聴くべきだと感じます」

朝日新聞朝刊に意見広告「彼らが学校ストライキをする理由」を掲出して広報支援を行ったパタゴニア日本支社の辻井隆行支社長は若者たちを支援する思いをこう言い切った。同社からは、表参道のマーチに社員約100人が駆け付け、各店舗ではマーチの参加者向けに段ボールでボードをつくる特設ブースを設けた。

グローバル気候マーチに合わせて店舗前にブースを設けた

化粧品メーカーのラッシュジャパンも、このマーチへ参加するため国内全84店舗で一時的な営業停止や照明を落とすといった縮小営業を行った。このように若者たちがつくったマーチに賛同した企業・NGOは8つあり、加えて38の環境保護団体が集客や運営を手伝った。

気候危機を訴えるグローバル気候マーチが東京で初めて開かれたのは今年の2月に遡る。その時の参加者は学生5人と社会人15人のわずか20人だった。しかし、翌月のマーチには150人が集まり、5月には250人と右肩上がりに増えていった。この流れを受け、9月20日の2800人へとつながった。

急拡大した要因を探る前に、このグローバル気候マーチについて説明したい。このマーチの生みの親は、スウェーデンの高校生、グレタ・トゥーンベリさんだ。彼女は昨年、全米800カ所で起きた銃規制を訴える巨大デモ行進を呼び掛けたのが同世代の高校生だと知ったことを契機にある行動に出る。

それが、学校にあえて行かない「スクール・ストライキ」と呼ばれるものだ。彼女がこの行動を取った理由は、気候危機の問題を世の中に訴えるため。

さらに、毎週金曜日には同国の国会前で気候変動対策を求める抗議活動も始めた。こうした取り組みは、「Fridays For Future(未来のための金曜日、以下FFF)」と呼ばれ、気候危機に立ち上がった彼女の行動に感化された世界の若者が各地でFFFの派生団体を立ち上げる流れが起きた。

40度の熱波を観測したフランスでもマーチは行われた。写真は9400人が集まったパリ・ナシオン広場の銅像に登ってプラカードを掲げる若者たち

FFFに共感した世界の若者たちは、9月23日の「国連気候アクションサミット(米ニューヨーク)」に合わせて、「グローバル気候マーチ」と称して、2019年に入ってから世界各地で相次いで開催してきた。

日本でも、グレタさんの行動に感化された高校生と大学生が、今年の始めに学生有志団体を結成。今年の2月からマーチを開き、いまでは23都道府県に広がった。

急拡大した要因について、東京でのマーチを企画したFFF Tokyoのオーガナイザーの梶原拓朗さん(国際基督教大学1年生)は、「気候変動に対して取り組みが進まないことへの怒りや恥ずかしさを、ロジックではなく、とにかく感情的に訴えた」と話す。

FFF Tokyoオーガナイザーの梶原さん

いま気候危機は喫緊の課題だ。世界経済フォーラム(ダボス会議)が発表した「グローバルリスク2019」では、最も発生確率が高く、最も影響力があるリスクとして「異常気象」を挙げている。気候変動を人類の危機と捉える「気候非常事態宣言(CED)」が世界各国の地方議会に広まり、英国やカナダ、フランスなどが政府単位で宣言に踏み切った。

グローバルでは気候変動に対する取り組みが加速するなか、ベースロード電源を原発とする日本は石炭を推進し続けている。国連のアントニオ・グテーレス事務総長は9月23日から開幕した国連気候アクションサミットで日本にスピーチの機会を与えないことを決めた。

「スピーチの機会を与えられないことは、学級委員会で発言権をもらえないこと。国際社会の潮流と逆行している日本は本当に恥ずかしい」(梶原さん)

SNSが盛んになった時代において、第三者の視点から自分たちの状況を見られるようになった。このことも、若者を中心に半年で140倍に膨れ上がった要因の一つと分析する。

「SNSではグレタさんを筆頭に同世代や下の世代が、気候危機に対して声を上げている姿を見ることができる。それを見て、自分はどうだろうかと思い、参加するのではないか」。

梶原さんは途上国支援に関心はあったが、環境問題への関心はなかった。大学で気候変動に関する映画を観たことがきっかけで、グローバル気候マーチを知り、参加した。マーチでは、大人を含め数百人を先導する同世代の姿に感化され、仲間に加わった。

FFFTokyoには約20人の高校生と大学生がおり、週に1回のペースで会議を行う。マーチを行うには、集客だけでなく、場所を抑えるために警察への申請などいくつかの事務的な手続きが必要になる。協力してくれるNGOらからアドバイスを受けて、一つひとつのタスクを話し合う。

組織のあり方として特徴的なのは、「代表をあえて置かない」「メンバーはフラット」という点だ。責任の所在を明確にしたくないとの理由から代表はあえて置かないことに決めた。オープンな議論をするため、年齢や役職関係なく、全員同じ権限を持つ。

気候変動は領域が広いので、メンバーの関心ごとは環境、生物多様性、原発問題など様々だ。メンバーの個性を尊重しながら、組織化しているので、参加することへの「ハードルを下げた」。

若者の呼びかけに大人も加わった

組織としては、「気候危機を止める」という方向性を定めているが、関心事が異なるので、アプローチ方法はそれぞれ異なる。「全員かなり強い意志を持っているので、議論を収集することにかなりの労力を使う」と課題を述べる。

SNSを介して、さまざまなバックグラウンドを持つ若者が集まってできた団体なので、組織マネジメントは今後の課題だが、人を巻き込む力は止まらない。

社会性のある広告キャンペーンを展開する社会の広告社の山田英治社長は、「莫大な広告予算を投下することで集客するのではない彼らの分散型市民運動の手法には、見習うべきものがある」と話した。

なぜ彼らには人が集まるのか。設立当初からサポートする国際環境NGO350.org日本支部の荒尾日南子氏は、「気候危機の一番の当事者はこれからを生きる若者たち。だから、彼らの言葉は社会に広く響いているのだと思う」と述べる。

「グレタさんや世界の同世代の勇姿を見ることによって、社会に出たことがなくても社会を変えられる力を持っていると気付いた若者が続々と立ち上がっている。見ていた頼もしさを感じる」と目を細めた。




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