ゴーヤや朝顔などのつる性植物で日かげをつくる「緑のカーテン」が産官学で広がっている。電力不足が懸念される今夏、節電対策の一つとして注目が集まっているのだ。活動を始めた企業や団体に、その理由を伺うと、節電以外にも様々な効果があることがわかった。

中部電力は20年前から緑のカーテンに取り組むさきがけ的存在だ。昭和60年から家電の節電方法に関する研究を始め、この緑のカーテンによるエアコン消費電力抑制効果に着目していた(当時の名称は「植物すだれ」)。その後平成4年から一般家庭につる性植物の種を無料で配布する「緑のカーテンキャンペーン」を開始し、今年で20周年になる。「昭和から平成初期にかけてのバブル景気で電力需要が急増したことを受け、節電への取り組みを『見える化』することでみなさまの節電意識を広めたいとの思いから始めた」と広報部の松岡亜紀子さんは説明する。

節電以外の効果を期待し、取り組みを始めた企業もある。FMラジオ局のJ-waveでは2008年から「Glow Green Project」を開始し、その活動の一環としてゴーヤの種を配布している。「節電対策や環境問題もさることながら、ゴーヤの種を配布したことによって、植物を育てる優しい気持ちを育んでもらいたい。家庭の中に緑のカーテンがあることで親子間や家庭で何気ない会話を引き出し、そんなやさしいつながりをリレーションしたい」(編成部松村龍太郎さん)のが理由だ。

学校でも緑のカーテンは実施されている。昨年、都内では小学校535校、中学校157校が緑のカーテンを実施した。緑のカーテンを通じた交流も始まりつつある。今年からは杉並区の浜田山小学校と仙台市立七郷小学校との間でお互いに育てた緑のカーテンの成長具合をパソコンで確認し合う「グリーンカーテン」交流が計画されている。仙台市立七郷小学校で緑のカーテンを担当する亀崎英治さんは「生命を育てるという総合学習として緑のカーテンを始めた。今後は子どもたちが緑のカーテンを育てることで、町の人が見に集まってきて癒しや地域活性化につながれば」と期待する。

こうした動きは霞ヶ関にも伝わり、今年6月、環境省が取り組んでいる温暖化防止のための国民運動キャンペーン「チャレンジ25」の新しいプロジェクトとして、「グリーンカーテンプロジェクト2011」が立ち上がった。全国で行われている緑のカーテン活動の事例をまとめたり、緑のカーテンの普及啓発活動を行う。

電力問題以外に、日本が立ち向かわなければいけない問題は山ほどある。ストレスによる自殺、人のつながりの希薄化から生じるとされる鬱病などである。緑のカーテンは節電対策以外にも、緑の力による精神的な癒しを生む。人と人とをやさしい気持ちでつなげる緑があるライフスタイルの広がりに期待したい。

(オルタナS 池田真隆)

備考URL
◆グリーンカーテンproject2011
http://www.challenge25.go.jp/green/
◆中部電力 2011年度「緑のカーテンキャンペーン」
http://www.chuden.co.jp/energy/kankyo/chiiki/curtain/2011campaign/index.html
◆GROW GREEN PROJECT
http://www.j-wave.co.jp/blog/mp_growgreen/
◆仙台市立七郷小学校
http://www.sendai-c.ed.jp/~sichi-el/