――動物と人間の関係についてどのように考えていますか。
永田:人間は万物の霊長で、ほかの動物を支配していると思っていました。しかし長年、動物と接しているうちに、それは人間の思い上がりにすぎないとわかりました。
動物も病気にかかったら、人間と同じ治療を受けますし、使う薬も同じです。違いがあるとすれば、発達している器官。人間は大脳が、猫は小脳が、犬は嗅覚が発達しています。人間と同じように犬も猫も年をとったらぼけてくることもあります。人間より寿命の短い動物は、ある治療を受けるとどのようになるか、そしてどのように死んでいくかを見せてくれます。
我々の先生になってくれるのです。見本を示してくれるので、参考になります。動物の一生を知ることができるのは、日々、さまざまな動物と接している獣医師だけなので、我々にはそれを伝える義務があると思っています.
――治療について考え方の変化はありましたか。
永田:最初の10年ぐらいは教科書に書いてある通りの治療をしていました。しかし同じ病気の動物でも、飼い主によって違う治療を希望することがあります。
お金の問題だったり、飼い主との絆の深さの違いだったりと理由はさまざまです。番犬や猟犬として犬を飼っていて、役に立たなくなったら次の動物に変えてしまう人もいます。
また『腎臓が悪くなった飼い猫に自分の腎臓を移植してやってほしい』と言うほど動物を愛している飼い主もいます。飼い主の要望に応じて別々の治療を施してきた結果、熱心に治療をしないほうが、動物が長生きすることがわかりました。