――教科書に書かれている治療が必ずしも正しいわけではないということですね。

永田:一般的に、ある治療が効果的だという根拠を示すには、その治療を施した場合とそうでない場合にどのような違いがあるかを比べる試験をする必要があります。

これは無作為化比較試験と呼ばれるのですが、現状ではあまり行われていません。ただ、自分は獣医師として数多くの動物の治療を比べ、熱心に治療をしない方がよいと分かりました。

一般的に広がった医療行為が否定されてきた歴史をみると、現在盛んに行われている医療行為が明日には否定される可能性もあります。たとえば、以前は子どもが発熱したら、解熱剤を飲まないと脳に影響を与えると考えられていました。

しかし、現在では解熱剤は使ってはいけないといわれています。我々は知らない間に世間で流れている情報に洗脳されているのです。このような科学的根拠がない治療が流布しているのは、医学が大きな影響力を持っていることによると思います。

――では、私たちはどのように医療行為を選択すればいいのでしょうか。

永田:手術など危険が大きい治療を勧められた場合は、その治療を受けるべきかどうかを確かめるために、ネットで調べたり別の医者に聞いたりするといい。

心から信頼している医者がいれば、その人に任せるのもいいと思います。私のところに来る飼い主も、ネットなどで情報を調べています。

私は、自分自身の考えを説明したうえで、飼い主の直感で治療を受けるかを決めてくださいと言っています。そうすれば、ほとんどの飼い主は私の考えに賛同してくれます。

――飼い主に判断を任せるのはなぜでしょうか。

永田:現在行われている多くの医療行為は無作為化比較試験による寿命の比較が行われていません。その医療行為を受ければ受けないより長生きできる確率が高いと確かめられていないのです。ですから最終的には直感で判断するしかない、と考えているからです。

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