エシカルファッションを具体的に理解することはたやすくない。そこで、高校の授業では、パリ・エシカル・ファッションショーで用いられている6つのロゴマークを使って説明をしている。
パリでは、エシカルなファッションブランドが世界中から集まってくる展示会が2004年から行われている。私も昨年3月に訪問し、取材を行った。
それぞれのブランドがエシカルといえる理由は様々である。そこで事務局は、エシカルの定義を、「リサイクル」「フェアトレード」「有機栽培」「天然素材」「伝統技術」「ソーシャル・プログラム(社会的弱者への支援)」の6つのロゴマークに分けている。こうして各ブランドにあてはまるマークを表示することで、何故エシカルと言えるのかをわかりやすく伝えている。
高校生に意味を知らせずに、まずそれぞれのマークを見せて、何を示しているか想像させると、すぐに判別できるマークに、天秤の形の「フェアトレード」がある。
しかし、その意味となると怪しくなってくる。価格が公正、ということは何となく知っている。しかし、フェアトレードが人権やその土地の文化を大切にする、という側面は教えて初めて知る。
価格が公正、というのも、現地での生活がきちんと成り立つ金額、ということだ。しかし生徒はフェアトレードは通常の商品よりもかなり価格が高い、というイメージを持っている。
だから、大量生産のアクセサリーと、フェアトレードの伝統技術を用いたインドの職人技のアクセサリーが、デザインはそっくりなのに、どちらも1500円である、ということを示すと、生徒は本当に驚く。そして「それなら職人技のアクセサリーが欲しい!」という声が挙がる。
普段、高校生は背景や質を考えずに目の前の商品の色形だけを見て買い物をしている。けれども、本当に価値があるものを提示した時に、受け入れる力はとても高い。今までに知らなかった価値に「気付く」機会を設けることが、教育の意義である。(寄稿・お茶の水女子大学附属高等学校家庭科教諭 葭内ありさ)
【葭内ありさ(よしうちありさ)】
お茶の水女子大学附属高等学校家庭科教諭、同大学非常勤講師。
お茶の水女子大学、同大学院人間文化研究科修了。慶應義塾大学法学部卒業。恵泉女学園中学・高等学校を経て現職。エシカル・ファッションを通じて、「背景」へのまなざしを育てる消費者教育を広めている。