松澤さんは、大学3年の1年間をアメリカで過ごした。教育学部での留学は珍しいことでもあったが、小さい頃から海外や英語を話すことに興味があった松澤さんにとって、その選択は自然なものであった。

様々な人種が集まるアメリカで、松澤さんは人種や宗教問題に興味を持ち、自らドキュメンタリーを撮り始めたという。色々な人へインタビューをし、ダイバーシティ問題に向き合った1年だったそうだ。

そんな中、インターンのために滞在していたシリコンバレーの家の近くで、殺人事件が起きた。ニュースでその事件を知った松澤さんは、犯人が供述した犯行理由に大きなショックを受けたという。「イスラムはアメリカの敵だ。だから殺した」。それが犯人の供述だった。被害者の男性は、頭にターバンを巻いていたのだ。

犯人はそのターバンを理由に、被害者の男性をイスラム教徒だと決めつけ犯行に及んだ。「この事件には2つの誤解があった」と松澤さんは言う。まず、「イスラムがアメリカの敵」だという思い込み。そして、ターバンを巻いていたその被害者男性は、実際はイスラム教徒ではなかったのだ。さらに驚いた事に、こういった憎悪犯罪は珍しくなかったという。

滞在中、人種問題などに目を向けていた松澤さんにとって、帰国前に起こったこの事件は忘れることのできないものとなった。今後、日本にも外国国籍を持つ人は増えていき、また、日本人も外国へ出て行く。「そのとき、日本で同じような事件が起きて欲しくないと思った」と松澤さんは言う。

私たちは知らず知らずのうちに、メディアを通して得た情報だけでその国を知った気になり、良い意味でも悪い意味でも多くの誤解をしているのかもしれない。

知るきっかけをつくる

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