留学時代、松澤さんは徹底して日本語を話さず、積極的に現地の学生と交流し親友もできた。「日本人グループに声をかけてくる人は、元々日本に興味のある人。でもそうでない現地の学生たちは、日本について何も知らなかったりする。親友でさえ、私をざっくりアジア人と捉えていたので、香港と日本を間違えたことがある」と、当時を振り返る。

「日本に興味を持っていない人たちに、日本という国を知ってもらいたい」と思った松澤さんは、友人を集めて手巻き寿司パーティーを開いた。みんなで手巻き寿司を食べながら、日本やお寿司についての話をしたという。

「ただ知ってもらおう!ではなく、美味しいものを食べて、楽しい時間を過ごしながら知るきっかけを作りたい」というのが、松澤さんの思いだった。それが現在のランチトリップの土台となっている。

帰国後も人種問題などに向き合っていた松澤さんは、教員免許を保持しながらも「色々な世界を見たい」という理由から、企業への就職を選択した。「日本のものを世界へ出したい」という思いもあり、「3年以内に海外へ行ける」という点を重視して就職活動を行ったという。

友人2人と一緒にランチトリップを始めたのは、入社して二カ月が経った頃のことだ。出張が多く仕事との両立に大変な時期もあったというが、「それ以上に楽しかった」と松澤さんは話す。

一番初めの回では、クルー3人とパッセンジャー3人だけだった。それは「ただ人を集めるのではなく、コンセプトをしっかり理解してもらった上で参加してもらおう」という考えがあってのこと。

その後、参加した人からの口コミが広がり、ランチトリップはすぐに人気のイベントへと成長していった。大使館で行ったサウジアラビア便では100人が集まり、通常のレストランで行う約50人規模の回では、キャンセル待ちが出るほどである。

ワークショップでは、みんなで話し合う。タンザニア便にて(手前はタンザニア大使)

メディアになる

1 2 3 4 5