オリンピックで毎夜盛り上がりをみせるのも、あと数日のこととなった。日本国中が注目をしていたフィギュア女子。残念ながらメダル獲得とはならず、日本代表選手では、浅田真央選手の6位が最高順位となった。その浅田真央選手に対する森喜朗元首相の発言を巡り、多方面で物議を醸している。(オルタナS編集委員=伊藤由姫)

「あの子、大事な所で必ず転ぶ」――東京オリンピック・パラリンピック組織委員会会長でもある、森元首相のこの発言は、大きな波紋を呼んだ。その大部分は、森元首相に対する批判であったが、森元首相の発言全文を知る一部読者からは、「受け取り方によっては、批判されるような主旨のものではない」とし、メディアへの批判が生まれている。

このように、講演やインタビューなどでの発言を、抜粋する形で報じられ、話題となることは、過去たびたびあった。

麻生太郎副総理も、メディアによって行動や発言が取り上げられ、話題となった人物の一人だ。「ナチスの手口に学んだらどうか」という発言が取り上げられ、ナチスを肯定しているとして、批判を浴びた。しかしこれも、発言全体を見通せば、決してナチスを肯定的にはとらえておらず、むしろ批判し、日本における改憲の動きへ苦言を呈する内容であった。

このように報道されるのは、政治家だけではない。お笑い芸人のダウンタウン・松本人志は以前、自身のラジオ番組で「自殺するやつはアホ」との発言を取り上げられ、批判を浴びた。

しかし、それは自殺をする人をこれ以上多く生み出さないためには、自殺することに対しての空気感を変化させることが重要であるという話の中で発言した一文だ。全体をみると、自殺は、同情もされないし、かっこよくもない、むしろ恥ずかしいといった空気に社会全体がしていかなければ、自殺者は減らないといった主旨の発言であった。

松本氏は、自身の報道番組で、このように抜粋する形で誤解を生み出すメディアの報道の仕方に対して、苦言を呈している。

このことからも、報道の仕方には、いささか疑問を感じざるを得ない。インターネットが普及した今、メディアの様相も大きく変化してきた。

情報がどこでもすぐ手に入り、多様なメディアによって日々発信されている。そこで、人の興味を引くために、他のメディアより注目を集めるために、印象的な見出しや内容にするのは、生き残るための策であるとも言える。

情報を受け取る側にも問題は多々ある。しかし、本当のジャーナリズムとは何か、と考えたとき、このような報道姿勢は、決して肯定されるものではない。