著者の四角友里さんは、子どもの頃からインドア生活を送って過ごした。外で遊んだことはほとんどないという。彼女がアウトドアに目覚めたのは、夫である四角大輔さんに出会ってから。大輔さんは、超がつくほどのアウトドア好きだった。週末になると、釣りや登山に出かけ、付き添っていくうちに、友里さんも自然の魅力に魅せられていった。
元サンリオの商品企画プランナーのセンスを生かして、登山ウェアにおしゃれを加えた「山スカート」を発案し、朝日新聞やNHKなど複数の大手メディアに紹介される。また、AIGLEやMarmotなどのアウトドアブランドと和の自然観をテーマにした女性向けウェアやギアを共同開発した実績もある。
本書では、友里さんがおすすめするおしゃれなウェアやギア紹介のほかにも、山登りのテクニックが詳細に掲載されている。登山スケジュールの組み立てから、歩き方、山小屋泊についてまで、5章に分かれている。
体力がなかった友里さんが10年間登山を続けられ、標高2000m級の山を登れるようになったのは、単に体力を強化したからではなかった。自分に合ったギアを見つけ、小さな工夫を身に付け、「ありのままの自分」で楽しめるようになったからだと書かれている。
友里さんは、「本書は山登りのプロから学ぶ教科書ではない。初心者である私の失敗談、葛藤や悩みとどう向き合ってきたのかを通じて、あなたらしい山歩きを考えるきっかけになってほしい」と言う。
その言葉通り、山登りに関するテクニックだけでなく、失敗経験も多数紹介されている。木陰に隠れてトイレをしていたらトイレットペーパーが流されたことや、生理中の山登りについて、さらには、虫が好む色のウェアを着て苦労したことなど。失敗からヒントを得て、友里さん流の改善策も紹介されている。
本書のエピローグでは、10年間続けた山登りに対する友里さんの気持ちが書かれている。広大な大自然に囲まれた中では、自分自身も「自然の一部」と気付かされるという。幼少期からインドア生活を送っていたこともあり、新鮮な視点で自然と対峙する著者の思いが込められた一冊だ。(オルタナS副編集長=池田真隆)
・『一歩ずつの山歩き入門』