暴力を含めた家族問題への対応に関し、住民が相談を持ち込む最初の窓口となるのは、家族省地域支所で働く技官たちだ。日本の社会福祉士と類似した役割を担っているが、国家資格や人材育成の制度が整備されておらず、十分な専門知識を持たないまま仕事をしている技官も多くいた。

家族問題に介入するには、法律など高い専門性が求められるため、窓口となる技官の基礎能力の向上はプロジェクトを進めていく上での必須課題である。家族省の社会福祉に対するビジョンは高いが、 現実に質の高い行政サービスを提供していくためには、人材能力・業務オペレーションともに不十分な状態であった。

JICAがまず行ったのは技官の能力研修、そして業務オペレーションのマニュアル化。方向性はあってもそれを実施するための中身がなかったため、そこを強化していく必要がある。また、最終的に国家政策へと反映させていくため、期待とともに責任は重大だ。

そして人材育成もさることながら、このプロジェクトが目指すのは、家族省内の「予防」と「ケア」という業務区分を調整した統合サービスを構築すること。包括的なサービスを提供することで、より家族・地域の福祉ニーズに合った支援が可能となる。

「支所の業務に特化した具体的な人材育成は急務の課題でした。正しく業務を行うことが、子どもや女性の命を救うことに繋がるということを、きちんと理解してもらわないといけません。また、従来は2つのセクションで別々に行われていた『予防』『ケア』の活動を調整し、包括的なサービスとして提供していこうとしています。子どもや女性が陥っている問題単体を扱うのではなく、彼女たちを取り巻く環境全体を見ることによって、より根本的な解決に繋げることができる。しばらくしてまた同じ問題に陥ってしまうような、モグラ叩きになってはいけないんです。家族省のサービス統合には、そうした狙いがあります」(佐藤さん)

ニカラグアにジェンダーの視点を

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