中米にはマチズモ(男性優位主義)という考え方が、悪しき慣習として残っている。そのような社会や個人のジェンダー観は、日々の生活や言動の中に深く根ざし、たとえ普段は自覚的ではなくても男女間の格差や不平等として表れている。家族や地域に関する問題にもジェンダーが関わっていることが多く、ジェンダー問題はプロジェクトの計画当初から問題意識としてあった。
ジェンダーは家族省が掲げる横断的視点の一つだが、支所レベルの業務において実際に取り組むには、技官の能力・意識ともに不足しているのが現状だ。公平な立場であるべき技官には、ジェンダーに関する正しい知識を身につけてもらう必要があり、そうした問題に適切に対応できるような家族省の体制を作っていかなければならない。
「プロジェクト計画当初にNGOを訪問して聞いた話なのですが、例えば家族省に家庭内暴力の問題で母親が相談に来たときに、その母親に対して『お母さんなんだから、子どものために我慢しなさい』と答えてしまう技官がいたそうです。個人の人権ではなく、古い価値観に基づいて間違った対応をしてしまう。残念なことですが、そういう意識を持った技官はまだまだいます。ジェンダーの問題は意識に深く関わることなので、そう簡単に変えられるものではありません。ただ、ジェンダーの視点を養うことはプロジェクトにとってはもちろんですし、この国の未来にとっても必要なことなんです。プロジェクト期間を通じて取り組んでいかなければならないことだと思っています」(宇佐美さん)
■JICAの新しい挑戦