自立生活とは、その人の人生において自ら決定することが最大限に尊重されることである。従来の身辺的・経済的・精神的自立の概念で、自立できないとされていた重度障がい者に対して、自立生活センターが様々なサービスを提供することで、介助者を使っての自立した生活が可能となった。

自立生活センターは大きく①介助者派遣業務、②相談業務、③権利擁護・啓発活動、の3つの役割を担っている。同センター運営における資金源となるのは、介助者派遣業務に対する行政からの給付金である。日本では、自立生活センターが介助者を1時間派遣するごとに、「介護給付金」として行政から報償が支給される仕組みになっているが、コスタリカでは未だ制度化されていない。

「現在コスタリカには、障がい者が介助者を使える制度はありません。現在は日本からの資金援助によって運営が成り立っていますが、今後自立生活センターを普及させていく上では、行政と連携して介助者制度を作っていくことが不可欠。『あらゆる障がいを持った人に機会と権利を保障する』と法律で明記しながらも、実際には障がい者が自分の意志で社会参加できる状況にはないんです。すべての人が暮らしやすい社会へと変えていくためにも、まずは行政を動かしていかないといけない」と井上さん。

ペレスセレドン自立生活センターのメンバーには、コスタリカ各地から集まった障がい者がおり、ここで自立生活センターの機能が確立すれば、全国的な普及が可能となる。また、将来的にはコスタリカが自立生活運動のハブとして、近隣の中米諸国へと技術移転していくことも期待できる。

誰もが暮らしやすい社会のために

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