2008年のリーマンショックがいかにして起きたかを、ウォール街関係者や政治家、経済学者、ジャーナリストらへのインタビューを通して浮かび上がらせる。そう書くと、これは経済学の映画だと思われそうだが、私はむしろ社会学と見た。

映画は金融危機の遠因を1980年代の規制緩和に求め、2000年代のローンの証券化や金融派生商品の発展が、市場のリスクを高め、破滅を招いたと考える。そしてその間、レーガン、ブッシュ、クリントン、ブッシュと政権が変わりながら、金融システムの中枢はほぼ同じ顔ぶれが担い、ほぼ同じ御用学者が擁護。それはオバマ政権の今も変わらないと主張する。

指摘されるような癒着の是非はともかく、もはや市場の暴走を止めるのは市場のプロしかいないというのが各政権に共通した認識だった。専門家にしか立ち入れない領域となると、なにやら原発の世界みたいだ。

「米国は津波が来ているのに水着を選んでいる」「金融工学は夢を作る。夢が悪夢になったら、誰がツケを払うのか」というフランスや中国の金融当局の指摘が真っ当なのは、彼らが「インサイド」でないからだ。 (古賀重樹)